ポケモンの水タイプの技で、昔からよく議論になるものがある。
それが、ハイドロポンプ となみのりである。
ハイドロポンプは命中80%・威力110。 なみのりは命中100%・威力90。
では、どちらが強いのか。
命中率の安定を取るならなみのり。 火力を取るならハイドロポンプ。
ここでよく出てくるのが、期待値 という考え方である。
期待値とは何か
数学には期待値という考え方がある。
きちんと言うなら、「ある結果が起こる確率」と「その結果の値」を掛けて、それらを全部足し合わせたもの、ということになる。
ただ、そんなふうに言われても、正直なんのこっちゃわからないと思う。
要するに、
何回も同じことを繰り返したら、だいたいどれくらいの結果になりそうか
を見る考え方である。
たとえば300円の宝くじを買ったとき、平均すると何円くらい戻ってきそうかを考える、あの感じである。
ハイドロポンプとなみのりの期待値を計算してみる
では、この二つの技で期待値を取ってみる。
ハイドロポンプは、命中80%で威力110だから、
0.8 × 110 = 88
となる。
一方、なみのりは、命中100%で威力90だから、
1.0 × 90 = 90
となる。
つまり、期待値だけを見るなら、なみのりの方が上である。
ここだけ見ると、
じゃあもうなみのりでいいじゃん
となりそうである。
でも、対戦は期待値だけでは決まらない
ところが、この話はそんなに単純ではない。
なぜかというと、ポケモン対戦では「平均的にどれくらい削れるか」だけでなく、 その一発で倒せるかどうか がとても大事だからである。
たとえば、なみのりでは少しだけ火力が足りず、ハイドロポンプなら倒せる場面があるとする。
そのとき、
- なみのりなら確実に当たるが倒せない
- ハイドロポンプなら20%で外すが、80%で倒せる
ということになる。
そうなると、期待値で2だけ高いからなみのり、とは簡単には言えない。
むしろ、そのターンに相手を倒せるかどうかが勝敗に直結するなら、80%に賭けた方がよいという理屈も十分成り立つ。
期待値が高いことと、その場で最善であることは、必ずしも同じではない。
平均の話と、一回の勝負の話は違う
ここで区別したいのは、
- 長い目で見た平均の話
- その一回の勝負でどうするかという話
が別だということである。
期待値という考え方は、何回も同じような場面があるときにはとても便利である。
しかし、ポケモンの対戦は、毎回まったく同じ状況ではない。
そのターンで倒せるか、そのターンをしのげるか、裏のポケモンまで含めてどうなるか、という判断が入る。
だから、単純に期待値だけで技選択に終止符を打つことはできない。
結局、何を重視するかの話になる
では、ハイドロポンプとなみのりの論争に結論はあるのか。
たぶん、完全な結論はない。
期待値だけ見るならなみのりが上である。
しかし、対戦で本当に大事なのは、「平均で少し得をすること」より、「その場で必要なラインを超えられるかどうか」のことも多い。
だから、
- 安定を取るならなみのり
- 必要な火力ラインを意識するならハイドロポンプ
という話になる。
要するに、数学的に一発で答えが出るようでいて、実は何を重視するかによって答えが変わる。
そこが面白い。
ポケモンは、数学っぽく考えるとさらに面白い
ポケモン対戦は、単なる感覚だけでやっていてももちろん面白い。
ただ、期待値のような考え方を少し入れると、技選択や立ち回りの見え方が変わってくる。
しかも、そこで終わらないのがまた良い。
「じゃあ期待値が高い方が常に正しいのか」というと、そうでもない。
そういう意味では、ポケモンは数学の問題集みたいに一つの正解がある世界ではなく、 数学っぽい考え方を使いながら判断するゲーム なのだと思う。
だから面白いし、だから議論になる。