塾長ノート

ネコにこばんはなぜ英語でPay Dayなのか

ことわざをそのまま訳さず、効果を前面に出した英語名の面白さ

ポケモンの技名には、日本語名と英語名でかなり印象が変わるものがある。

その一つが、ネコにこばん である。

日本語名だけ見ると、これは完全にことわざである。

「猫に小判」。

価値のわからない相手に、価値あるものを与えても意味がない、という意味のことわざである。

ところが、この技は英語名になると Pay Day になる。

ネコにこばんなのに、英語では「給料日」になる。

かなり思い切った訳である。

直訳するなら、Coins to a Cat や Gold Coin to a Cat のようになりそうである。

では、なぜ英語版ではそうせずに、Pay Day という名前になったのだろうか。

日本語名「ネコにこばん」はことわざそのもの

まず、日本語名の「ネコにこばん」は、ことわざの「猫に小判」から来ている。

小判は、昔のお金である。

人間にとっては価値があるものでも、猫にとってはその価値がわからない。

そこから、

価値のわからない相手に、価値あるものを与えても意味がない

という意味で使われる。

かなり日本語らしい表現である。

しかも、この技はニャースと相性がよい。

ニャースは猫のポケモンで、額には小判のようなものがある。

つまり、日本語名の「ネコにこばん」には、

  • 猫であるニャース
  • 額の小判
  • ことわざ「猫に小判」
  • お金に関係する技の効果

が重なっている。

かなりよくできた名前である。

直訳するとどうなるか

では、「ネコにこばん」をそのまま英語にするとどうなるだろうか。

直訳に近い形なら、

  • Coins to a Cat
  • Gold Coin to a Cat
  • A Coin for a Cat

のようになる。

ただし、これでは英語圏のプレイヤーには意味が伝わりにくい。

日本語では「猫に小判」ということわざがあるから、短い言葉で意味が伝わる。

しかし、英語で Coins to a Cat と言っても、それがことわざとして自然に通じるわけではない。

「猫にコインをあげる技なのかな」とは思うかもしれないが、「価値がわからない相手に価値あるものを与える」という意味までは伝わりにくい。

ことわざは、言葉をそのまま置き換えても、同じように伝わるとは限らない。

ここが翻訳の難しいところである。

英語の近いことわざに置き換える方法もある

英語にも、「猫に小判」に近い意味を持つ表現はある。

代表的なのは、

cast pearls before swine

である。

直訳すると、「豚の前に真珠を投げる」という意味になる。

日本語で言えば、「豚に真珠」にかなり近い。

意味としては、「猫に小判」とよく似ている。

価値のわからない相手に、価値あるものを与えても無駄である、という意味である。

では、ポケモンの技名も Pearls Before Swine にすればよかったのだろうか。

これはこれで、やはり難しい。

なぜなら、今度は猫の要素が消えてしまうからである。

ニャースは猫のポケモンである。

額に小判がある。

そのポケモンが使うからこそ、「ネコにこばん」という名前が面白い。

英語の近いことわざに置き換えてしまうと、意味は近くなるが、ニャースらしさはかなり薄くなる。

意味を取ると猫が消える。猫を残すとことわざとして伝わりにくい。

ここで、翻訳としてかなり難しい選択が生まれる。

Pay Day は「給料日」

そこで英語版では、ことわざを訳すのではなく、技の効果を前面に出した。

それが Pay Day である。

pay は「支払う」、day は「日」である。

つまり Pay Day は「給料日」という意味になる。

Pay Day = 給料日

この技は、相手にダメージを与えるだけでなく、戦闘後にお金が得られる技である。

だから、Pay Day という名前は、技の効果から見るとかなりわかりやすい。

「この技を使うと、お金がもらえる」。

そのイメージが、英語名では一発で伝わる。

日本語名は文化とキャラクター性、英語名は効果のわかりやすさ

ここで、日本語名と英語名の方向性の違いが見えてくる。

日本語名の「ネコにこばん」は、かなり多層的である。

  • 日本語のことわざ
  • 猫であるニャース
  • 額の小判
  • お金に関係する技の効果

が全部つながっている。

一方で、英語名の Pay Day は、ことわざや猫の要素をあまり残していない。

その代わり、

戦闘後にお金がもらえる技

という効果がとてもわかりやすい。

つまり、

  • 日本語名:文化、ことわざ、キャラクター性を重視
  • 英語名:技の効果、わかりやすさを重視

という違いがある。

これは、かなり面白い翻訳の判断である。

失われたものもある

もちろん、Pay Day という名前になったことで、失われたものもある。

まず、「猫に小判」ということわざの面白さは英語名だけでは伝わらない。

また、ニャースの猫らしさや、小判とのつながりも弱くなる。

Pay Day は「お金がもらえる技」としてはわかりやすい。

しかし、日本語名にあった、

  • 小判
  • ことわざ
  • 少し皮肉なニュアンス

はかなり薄くなる。

ここが翻訳のおもしろいところである。

何かをわかりやすくすると、別の何かが消える。

逆に、元の言葉をそのまま残そうとすると、今度は意味が伝わりにくくなる。

翻訳は、何を残して、何をあきらめるかの選択でもある。

もし直訳していたらどうなったか

もし英語名が Coins to a Cat だったら、どう感じるだろうか。

たしかに、猫とコインの要素は残る。

ニャースとのつながりも、ある程度は伝わる。

しかし、英語の技名としては少し説明的で、ことわざとしての面白さは伝わりにくい。

逆に、Pearls Before Swine にすれば、ことわざとしての意味は近くなる。

しかし、今度は猫でも小判でもなくなる。

ニャースらしさがかなり消えてしまう。

そう考えると、Pay Day はかなり実用的な訳である。

ことわざそのものは捨てている。

しかし、技の効果をわかりやすく伝えることには成功している。

ここで学べる英語

今回覚えたい表現は、まず pay day である。

pay day = 給料日

pay は「支払う」、day は「日」なので、pay day は「給料日」という意味になる。

たとえば、

Today is pay day.
今日は給料日です。

のように使える。

もう一つ、ことわざとして知っておきたいのが、

cast pearls before swine

である。

直訳すると、「豚の前に真珠を投げる」。

日本語の「豚に真珠」や「猫に小判」に近い表現である。

ただし、少し硬めの表現なので、日常会話で頻繁に使うというよりは、ことわざとして知っておくと面白い表現だと思う。

ポケモンの技名は、ただの直訳ではない

「ネコにこばん」をそのまま英語にすると、猫と小判の要素は残せる。

しかし、ことわざとしては伝わりにくい。

英語の近いことわざに置き換えると、意味は近くなる。

しかし、猫と小判とニャースらしさは消えてしまう。

そこで英語版では、技の効果に寄せて Pay Day という名前にした。

これは、かなり現実的で、わかりやすい翻訳だと思う。

ネコにこばんは、日本語では「ことわざとキャラクター性」の名前。Pay Day は、英語では「技の効果」を前面に出した名前。

同じ技でも、どこに注目するかによって名前のつけ方は変わる。

ここに、翻訳の面白さがある。

まとめ

ネコにこばんは、英語では Pay Day と訳されている。

日本語名は、ことわざ「猫に小判」をもとにした名前である。

そこには、猫であるニャース、額の小判、お金に関係する技の効果が重なっている。

しかし、これをそのまま英語にしても、ことわざとしては伝わりにくい。

かといって、英語の近いことわざに置き換えると、ニャースらしさが消えてしまう。

そこで英語版では、技の効果に注目して Pay Day という名前にしたのだろう。

Pay Day は「給料日」という意味で、戦闘後にお金が得られる技の効果をわかりやすく表している。

日本語名は、文化とキャラクター性を重視した名前。

英語名は、効果のわかりやすさを重視した名前。

こうして比べてみると、ポケモンの技名はただの直訳ではなく、かなり工夫された翻訳であることがわかる。

技名をきっかけに英語や日本語の違いを考えてみると、言葉の見え方も少し変わってくる。

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