塾長ノート

「三単現にはsがつく」と教える弊害

動詞の活用として見せないと、名詞の複数形と混同しやすくなる

三単現のsについて、学校現場では「主語が三人称単数で現在形のときは、動詞にsがつく」と教えていることが多いと思う。

もちろん、これは説明として間違っているわけではない。むしろ、英語を学び始めたばかりの段階では、かなり便利な言い方でもある。

ただ、私はこの説明がいくつかの誤解を生みやすいとも感じている。

「三単現にはsがつく」という説明は便利だが、動詞が活用しているという感覚を育てにくい。

名詞の複数形のsと混同しやすい

一番大きいのは、名詞の複数形との混同である。

以前ブログでも触れたが、中学生英語では品詞の扱いがあまり前面に出てこない。結果として、多くの生徒は品詞に対して鈍感なまま英語を学んでいる。

その状態で「動詞にsをつける」と「名詞にsをつける」が並んで出てくると、両者が混ざってしまうことがある。

そして習ってしばらく経つと、

  • 主語が複数だから動詞にsをつける
  • 複数っぽいからとりあえずsをつける

というタイプのミスが増えてくる。

これは、生徒が怠けているからではなく、そもそも「sの性質の違い」が十分に整理されていないからだと思う。

大事なのは「動詞が活用している」と意識させること

私が指導するときは、三単現のsを「特別なルール」としてだけ教えるよりも、 動詞が活用している ということを意識させるようにしている。

そのときによく使うのがフランス語の例である。

フランス語では、主語の人称によって、およそすべての場合で動詞が活用する。規則活用の er 動詞ですら、すべての人称で形が変わる。

それを表にして見せると、活用という発想そのものが視覚的に理解しやすい。

そのうえで英語を見ると、英語はたった一か所だけしか変わらない。三人称単数現在のところだけが少し変化する。

つまり、英語は「活用しない言語」なのではなく、 ほとんど活用しない言語 なのである。

フランス語ではほぼ全部が変わる。英語では一か所だけ変わる。そう見ると、三単現のsも「変な例外」ではなく、活用のなごりとして理解しやすい。

こうして見せると、生徒にも「なるほど、英語も一応活用しているのか」という感覚が生まれる。

その流れで、冗談っぽく「よかったね、君たちが学ぶ言語が英語で」と言うこともある。フランス語の活用表を見たあとだと、たしかに英語はだいぶやさしく見える。

この説明は be動詞の理解にもつながる

ここで be動詞を持ち出すことも多い。

というのも、am / are / is の原形、つまり不定詞が be であることを、意外と多くの生徒が知らなかったり、知っていても理解していなかったりするからである。

しかし、人称ごとの活用表を書くと、

  • I am
  • you are
  • he is

という形が、ばらばらの暗記事項ではなく、一つの動詞の活用として見えてくる。

そうすると、一般動詞の三単現だけでなく、be動詞の活用の復習にもなる。

つまりこの話は、単に三単現のsの説明を工夫するというだけでなく、 英語の動詞全体をどう見せるか という話にもつながっている。

文法を教えるときは、便利さと誤解の両方を見る必要がある

学校文法の説明は、短く分かりやすくする必要がある。だから「三単現にはsがつく」という言い方そのものを全面的に否定するつもりはない。

ただ、その便利な説明がどんな誤解を生みうるかは、常に意識しておきたい。

特に中学生の段階では、品詞感覚が十分でないことも多い。だからこそ、ルールを覚えさせるだけでなく、

  • これは動詞の話なのか
  • これは名詞の話なのか
  • そもそも英語では何が変化しているのか

といった枠組みを少しずつ育てていく必要がある。

「三単現にはsがつく」という一文の背後にも、実はかなり大きな問題が隠れている。

文法を教えるというのは、ルールを渡すことではなく、誤解されにくい見方を渡すことなのだと思う。

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