英語では、
- a book
- a dog
- an apple
- an orange
のように、不定冠詞 a / an を使う。
学校ではたいてい、
- a は「1つの」「ある〜」を表す
- 母音で始まる語の前では an になる
と説明される。
これは現在の英語を使うためには、かなり便利な説明である。
ただ、歴史の流れまで見ると、もう少し面白いことが見えてくる。
a と an は、もともと「1」を意味する語とつながっている。
出発点には ān という語がある
出発点としてよく出てくるのが、Old English の ān という語である。これは「one」を意味する語で、現代英語の one とつながる古い形である。
ここで少しだけ記号の説明をすると、ān の ā は、a の上に横棒がついた形になっている。
この横棒は、母音が長いことを表す記号である。つまり、
ān = 「長い a を持つ語」
ということになる。
なので、記事の中で ān と書いてあったら、「古い英語の “one” にあたる語なんだな」と思ってもらえれば十分である。
one と a/an は、同じ出発点から分かれたと考えられる
現代英語では、
- one は数詞
- a / an は不定冠詞
なので、まったく別々のもののように見える。
しかし、歴史的にはそうではない。
出発点にある ān から、
- 「1つ」を強く言う系列が one に
- 数の意味が弱まり、不定を表す系列が a / an に
つながっていったと考えられる。
だから、one と a/an は無関係ではない。
ただし、
one → an → a
のような一直線というよりは、
ān という共通の出発点から、one の系列と a/an の系列が分かれていく
と考える方が正確である。
an の方が古い形として見えてくる
学校英語では、a を基本形として教え、母音の前だけ an を使うと説明することが多い。
もちろん、現代英語のルールとしてはそれでよい。
しかし歴史的には、むしろ an の方が古い形 と見る方が自然である。
そこから、子音の前では語末の n が落ちて、より軽い a が広がっていったと考えられる。
つまり、
an → a
という流れが、ここではかなり大事である。
なぜ n が落ちたのか
ここで面白いのが音の変化である。
言葉はしばしば、言いやすい方へ、軽い方へ、発音しやすい方へ変わっていく。
不定冠詞も、その一例として見ることができる。
たとえば、子音で始まる語の前では、
- an book
- an dog
よりも、
- a book
- a dog
の方が軽く言いやすい。
そうして、子音の前では n のない形が広がっていったと考えると、かなり納得しやすい。
一方で、母音の前では今でも an が残っている。
つまり、現在の
- a book
- an apple
という違いは、ただの暗記ルールというより、古い形と音の変化の結果が今も残っているものとして見られる。
文法のルールの背後には、音の変化が隠れていることがある。
学校文法と歴史の順序は違う
ここで一つ面白いのは、学校で習う順番と、歴史の順番は一致しないことである。
学校では、
- まず a を習う
- 次に、母音の前では an だと習う
という形が多い。
けれど、歴史的に見ると、
- 出発点には ān “one” がある
- そこから one と a/an の系列が分かれる
- さらに an から a への変化が起こる
という流れになる。
つまり、学習のための説明と、歴史の流れは別である。
そして、そのずれを知ることで、学校英語のルールも少し立体的に見えてくる。
a・an・one をつなげて見ると、知識がばらばらでなくなる
学校では、a / an と one は別々の項目として出てくることが多い。
それは実用上必要なことでもある。
ただ、歴史的な視点を少し入れるだけで、それらはばらばらの暗記事項ではなくなる。
a はただの「単数名詞の前につけるしるし」ではない。
an はただの「母音の前の特別ルール」ではない。
one もただの数字ではない。
これらは、古い ān という語から、それぞれ別の方向に発達してきたものとして見ることができる。
学校文法は知識を整理してくれるが、歴史はその知識どうしをつなげてくれる。
まとめ
学校英語では、不定冠詞 a は「1つの」「ある〜」を表し、母音で始まる語の前では an になると教わる。
それは現在の英語を使ううえでは、とてもわかりやすい説明である。
けれど、歴史的に見ると、出発点には Old English の ān という語がある。これは「one」を意味する古い形である。
そこから、
- 強く「1つ」を言う系列が one へ
- 数の意味が弱まり、不定を表す系列が a/an へ
と分かれていったと考えられる。
さらに、an は古い形として見え、子音の前では n が落ちて a が広がった。
つまり、
ān を出発点として、one と a/an が分かれ、さらに an → a という音の変化が起こった
と考えると、かなり見通しがよい。
そう考えると、学校で習う a と an も、少しだけ面白く見えてくるのではないだろうか。