英語の現在完了形を学ぶとき、 多くの学習者は次のような分類で習います。
- 経験
- 継続
- 完了・結果
たとえば、 I have been to Kyoto. は経験。
I have lived here for ten years. は継続。
I have finished my homework. は完了・結果。
このように分類すると、たしかに整理しやすいです。
ただ、ここで少し疑問が出てきます。
英語を母語として使っている人たちは、 本当に毎回、 「これは経験用法だ」 「これは継続用法だ」 「これは完了用法だ」 と意識しながら現在完了形を使っているのでしょうか。
おそらく、そうではありません。
もちろん、文法として分類すれば、 経験・継続・完了という分け方はできます。
しかし、実際の感覚としては、 それらはまったく別々の3つの文法というより、 現在完了形というひとつの表現が、文脈によって違って見えている と考えたほうが自然です。
この記事では、 現在完了形の3用法を否定するのではなく、 その奥にある共通感覚を整理してみます。
3用法は学習者にとって便利な分類である
まず、現在完了形の3用法そのものは、とても便利です。
英語を第二言語として学ぶ場合、 いきなり現在完了形の全体感覚をつかむのは難しいです。
そこで、 経験・継続・完了という形に分けておくと、 かなり理解しやすくなります。
I have been to Kyoto.
これは、京都に行った経験があるという文です。
I have lived here for ten years.
これは、10年前から今までここに住んでいるという文です。
I have finished my homework.
これは、宿題を終えて、今は終わっているという文です。
こうして3つに分けると、 たしかに説明しやすいです。
なので、 「3用法は間違いだ」 という話ではありません。
むしろ、学習の入口としてはかなり役に立つ分類です。
ただし、ここで止まってしまうと、 現在完了形がバラバラの3つの文法に見えてしまいます。
そこが少しもったいないところです。
ネイティブは分類名で使っているわけではない
日本語を考えてみるとわかりやすいかもしれません。
私たちは日本語を話すとき、 「これは完了のタだ」 「これは過去のタだ」 「これは発見のタだ」 と毎回分類して話しているわけではありません。
ただ、自然に使っています。
あとから文法的に分析すれば、 「このタは過去を表している」 「このタは完了を表している」 と説明できます。
しかし、話している瞬間には、 文法用語ではなく感覚で使っているはずです。
英語の現在完了形も、それに近いと思います。
ネイティブが毎回、 「これは経験用法だから現在完了形にしよう」 と考えているわけではないでしょう。
むしろ、 過去に起きたことを今とつながったものとして言いたいから、 自然に have + 過去分詞 を使っている。
その結果を学習者向けに整理すると、 経験・継続・完了という分類になるのだと思います。
現在完了形の核は「過去と現在のつながり」
現在完了形の核にあるのは、 過去と現在のつながり です。
形を見ると、それがよくわかります。
have + 過去分詞
ここで使われている have は現在形です。
一方、過去分詞は、 すでに起きたこと、完了したこと、経験されたことを表します。
つまり、現在完了形は、 過去に起きたことを、 現在の have で受け止めている形です。
かなりざっくり言えば、 「過去の出来事を、今の自分・今の状態に引きつけて見る」 表現です。
現在完了形の核は、 過去の出来事や状態を、今とのつながりの中で見ること。
この感覚を持っておくと、 経験・継続・完了が、まったく別々のものではなくなります。
それぞれ、 今とのつながり方が違う だけだと見えてきます。
経験は「今の自分が持っている経験」
まず、経験用法を見てみます。
I have been to Kyoto.
これは、 「京都に行ったことがある」 と訳されます。
この文では、 過去のある時点で京都に行ったことがあります。
ただし、関心があるのは、 具体的にいつ行ったかではありません。
今の自分が、 京都に行った経験を持っている。
ここが大事です。
つまり、経験用法では、 過去の出来事が 今の自分の経験 として残っています。
I have seen that movie.
これも同じです。
その映画を見た出来事は過去にあります。
しかし、今の自分は 「その映画を見たことがある人」 になっています。
だから現在完了形を使います。
経験用法の現在とのつながりは、 経験として今の自分に残っている という形で現れます。
継続は「過去から今まで続いている」
次に、継続用法です。
I have lived here for ten years.
これは、 「私はここに10年間住んでいる」 という意味です。
住み始めたのは過去です。
しかし、その状態は今も続いています。
ここでは、過去と現在のつながりがとてもわかりやすいです。
過去に始まった状態が、現在まで続いている。
だから現在完了形を使います。
She has known him since childhood.
これも、子どものころから今まで彼を知っているという意味です。
過去に始まった関係が、現在まで続いています。
継続用法の現在とのつながりは、 今も続いている という形で現れます。
完了・結果は「終わったことの結果が今に残る」
次に、完了・結果用法です。
I have finished my homework.
これは、 「宿題を終えた」 と訳せます。
宿題を終えた出来事は過去にあります。
しかし、現在完了形で言うと、 「だから今、宿題は終わっている」 という現在の状態が見えます。
過去に終えたことの結果が、 今に残っているわけです。
She has lost her key.
これは、 「彼女は鍵をなくした」 と訳せます。
ただし、現在完了形なので、 単に過去に鍵をなくしたというだけではありません。
「だから今、鍵がない」 という現在の状態が見えます。
完了・結果用法の現在とのつながりは、 結果として今に残っている という形で現れます。
3用法は「今とのつながり方」の違い
ここまで見ると、 経験・継続・完了は、別々のものではないことがわかります。
どれも、 過去と現在のつながりを表しています。
ただし、つながり方が違います。
- 経験: 過去の出来事が、今の経験として残っている
- 継続: 過去に始まった状態が、今も続いている
- 完了・結果: 過去に終わったことの結果が、今に残っている
こう見ると、現在完了形の3用法は、 3つの別々の文法というより、 ひとつの核から枝分かれした見え方 だと言えます。
根っこにあるのは、 過去を今につなげて見る という感覚です。
現在完了形の3用法は、 「過去と現在のつながり」がどのように見えるかの分類である。
過去形との違いもここにある
現在完了形の核が見えると、 過去形との違いも見えやすくなります。
I lost my key yesterday.
これは過去形です。
「昨日、鍵をなくした」 という過去の出来事を述べています。
I have lost my key.
これは現在完了形です。
「鍵をなくして、今もない」 という現在の状態が見えます。
どちらも日本語では 「鍵をなくした」 と訳せます。
しかし、英語では見ているものが違います。
過去形は、出来事を過去に置く。
現在完了形は、過去の出来事を今につなげる。
この違いが、現在完了形を考えるうえでとても大事です。
「現在完了形は現在形の仲間」と見る
現在完了形を理解するうえで、 もう一つ大事なのは、 have が現在形であることです。
I have finished my homework.
この文では、 finished という過去分詞が出てくるので、 過去の話に見えます。
もちろん、宿題を終えた出来事は過去にあります。
しかし、文全体の足場は現在にあります。
なぜなら、 have が現在形だからです。
つまり、現在完了形は、 過去の出来事を使いながら、 現在について語る表現でもあります。
「今、経験がある」
「今まで続いている」
「今、結果が残っている」
このように、どの用法でも 今 が関わっています。
3用法を覚えたあとに、ひとつに戻す
学習の順番としては、 まず3用法で覚えるのは悪くありません。
むしろ、最初はそのほうがわかりやすいです。
- 経験:〜したことがある
- 継続:ずっと〜している
- 完了・結果:〜してしまった、〜したところだ
ただし、そのあとで一度、 ひとつの感覚に戻したほうがよいです。
つまり、 「現在完了形には3つの意味がある」 とだけ覚えるのではなく、
過去を今につなげて見ると、文脈によって経験・継続・完了に見える と考えるわけです。
こうすると、現在完了形がかなりすっきりします。
3用法は入口。
核にあるのは、過去と現在のつながり。
この順番で考えるのがおすすめです。
用法名より、話し手の視点を見る
現在完了形を読むときに大切なのは、 用法名を当てることだけではありません。
もちろん、問題演習では、 「これは経験用法」 「これは継続用法」 と答える場面もあります。
ただ、本当に大事なのは、 話し手がその出来事をどう見ているかです。
I have been to Kyoto.
話し手は、 過去の京都旅行を、 今の経験として見ています。
I have lived here for ten years.
話し手は、 過去から続く生活を、 今まで続いているものとして見ています。
I have finished my homework.
話し手は、 過去に終わった宿題を、 今終わっている状態として見ています。
つまり、 どれも 今から過去を見ている のです。
この視点を持つと、 現在完了形はかなり理解しやすくなります。
現在完了形は「過去を今から見る」表現
ここまでをまとめるなら、 現在完了形は 過去を今から見る表現 です。
過去形は、出来事を過去に置きます。
一方、現在完了形は、 過去の出来事や状態を、今との関係で見ます。
その関係が、 経験として見えれば経験用法。
続いている状態として見えれば継続用法。
結果として見えれば完了・結果用法。
こう考えると、 3用法はバラバラではありません。
現在完了形というひとつの表現が、 文脈によって違う顔を見せているだけです。
現在完了形は、 過去を現在との関係の中で見る表現である。
今回のまとめ
今回は、 現在完了形の3用法をネイティブは意識しているのか、 というテーマで考えました。
経験・継続・完了という分類は、 学習者にとってとても便利です。
ただし、それは現在完了形が本当に3つの別々の文法に分かれている、 という意味ではありません。
根っこにあるのは、 過去と現在のつながり です。
- 経験: 過去の出来事が、今の経験として残っている
- 継続: 過去に始まった状態が、今も続いている
- 完了・結果: 過去に終わったことの結果が、今に残っている
つまり、3用法は、 現在とのつながり方の違い です。
ネイティブが毎回、 「これは経験用法だ」 「これは継続用法だ」 と分類して使っているわけではないでしょう。
むしろ、 過去の出来事や状態を今とつながったものとして見たいから、 現在完了形を使っている。
その結果を学習者向けに整理すると、 経験・継続・完了という分類になるのだと思います。
まずは3用法で覚える。
そのあとで、 「過去を今につなげて見る」 というひとつの感覚に戻す。
これが、現在完了形を理解するうえでかなり大切です。