英語の現在完了形は、日本語を母語とする学習者にとって、 かなりわかりにくい文法の一つです。
理由ははっきりしています。
日本語では、過去形も現在完了形も、 かなり広く 「〜た」 で表せてしまうからです。
ご飯食べた?
〇〇を受験することに決めた。
どちらも、日本語では自然な「た」です。
しかし英語では、 ここで過去形を使うのか、 現在完了形を使うのかによって、 見ている方向が少し変わります。
今回は、 現在完了形と過去形の違い を、できるだけ実感に近い形で整理していきます。
過去形は「過去の出来事」として置く
まず、過去形から確認します。
過去形は、出来事を 過去のある時点に置く 表現です。
I ate dinner.
これは、 「私は夕食を食べた」 という意味です。
英語の過去形は、 その出来事を過去の側に置きます。
話し手の意識は、 「食べた」という過去の出来事に向いています。
もちろん、過去形で話した内容が現在とまったく関係ないというわけではありません。
ただし、文法の形としては、 その出来事を 過去の出来事として切り出している と考えるとわかりやすいです。
I watched a movie last night.
I met him yesterday.
I decided to take the entrance exam.
これらは、どれも過去形です。
昨夜映画を見た。
昨日彼に会った。
受験することを決めた。
出来事を、過去に起きたこととして述べています。
現在完了形は「今につながる過去」を見る
一方、現在完了形は、形だけ見ると少し不思議です。
have + 過去分詞
という形をしています。
たとえば、
I have eaten dinner.
これは、 「私は夕食を食べた」 と訳せます。
ただし、単なる過去形とは少し見方が違います。
現在完了形は、 過去に起きたことを、 現在とのつながり の中で見ます。
「食べた」という過去の出来事そのものだけでなく、 「だから今、もう食事は済んでいる」 という現在の状態まで含んでいるわけです。
つまり、現在完了形は、 過去の出来事を話しているようでいて、 実はかなり 今 を見ています。
過去形は、過去の出来事として見る。
現在完了形は、過去の出来事を今につなげて見る。
「ご飯食べた?」は文脈で変わる
日本語の 「ご飯食べた?」 は、とても便利な表現です。
しかし、英語にするときは、 文脈によって形が変わります。
Did you eat dinner?
Have you eaten dinner?
どちらも、日本語では 「ご飯食べた?」 と訳せます。
ただし、ニュアンスは少し違います。
Did you eat dinner? は、 「夕食を食べたのか」 という過去の出来事を聞いています。
たとえば、 昨日の話をしていて、 「昨日ちゃんと夕食食べたの?」 と聞くなら、過去形が自然です。
Did you eat dinner yesterday?
一方、 Have you eaten dinner? は、 「今の時点でもう食事は済んでいるのか」 という感じです。
たとえば、これから出かける前に、 「もうご飯食べた?」 と聞くなら、現在完了形が合いやすいです。
関心があるのは、 過去の食事の時刻ではありません。
今、食事が済んでいる状態なのか。
ここに関心があります。
Did you eat dinner?
過去に食べたかを聞く。
Have you eaten dinner?
今の時点で食事が済んでいるかを聞く。
ただし、実際の会話では地域差や個人差もあります。
特にアメリカ英語では、 かなり広い場面で Did you eat? が使われることもあります。
だから、 「ご飯食べた?」は必ず現在完了形、 と機械的に覚える必要はありません。
大切なのは、 過去の出来事を聞いているのか、 今の状態を聞いているのか を見ることです。
現在完了形は「現在形」でもある
現在完了形を考えるとき、 かなり大事なのは、 現在完了形は現在形の仲間でもある ということです。
形を見てみます。
I have eaten.
ここで使われている have は現在形です。
つまり、現在完了形は、 過去分詞を使っているので過去っぽく見えますが、 文全体としては現在に足場があります。
だから、 現在完了形は 過去の話をしている現在形 と考えると、かなり見通しがよくなります。
過去に何かが起きた。
そして、その結果が今につながっている。
その「今につながっている」という部分が、 現在完了形の大事なところです。
「受験することに決めた」はどうするか
次に、 「〇〇を受験することに決めた」 を考えてみます。
英語では、たとえば次のように言えます。
I decided to take the entrance exam.
I have decided to take the entrance exam.
どちらも、 「受験することに決めた」 と訳せます。
しかし、見方は少し違います。
I decided to take the entrance exam. は、 「決めた」という出来事を過去の出来事として述べています。
たとえば、 「先週、受験することに決めた」 のように、過去の時点が意識されるなら自然です。
I decided to take the entrance exam last week.
一方、 I have decided to take the entrance exam. は、 「決めた結果、今はその決定を持っている」 という感じです。
つまり、 今の状態として 「受験することに決めている」 と伝えています。
この場合、関心は 「いつ決めたか」 ではありません。
今どういう決定になっているのか。
そこに関心があります。
I decided to take the entrance exam.
決めた出来事を、過去のこととして述べる。
I have decided to take the entrance exam.
決めた結果、今はその決定になっている。
現在完了形は「結果」が見えることが多い
現在完了形には、いくつかの用法があります。
継続、経験、完了、結果などと分けて学ぶことが多いです。
今回扱っているのは、 その中でも 完了・結果 に近い使い方です。
I have finished my homework.
これは、 「宿題を終えた」 と訳せます。
ただし、現在完了形なので、 単に過去に終えたというより、 「だから今、宿題は終わっている」 という結果が見えます。
She has lost her key.
これは、 「彼女は鍵をなくした」 と訳せます。
ここでも、 単に過去に鍵をなくしたというだけではありません。
「だから今、鍵がない」 という現在の困った状態が見えています。
このように、現在完了形は、 過去の出来事の 現在への影響 を表すことが多いです。
過去形は「いつ」が出ると自然になりやすい
過去形と現在完了形を見分けるうえで、 かなり大事なのが 時を表す語 です。
過去形は、具体的な過去の時点と相性がよいです。
I finished my homework yesterday.
I met him last week.
I decided to take the exam in April.
yesterday、 last week、 in April のように、過去の時点がはっきりしている場合は、 過去形が自然です。
一方、現在完了形は、 具体的な過去時点を示す語とは基本的に相性がよくありません。
× I have finished my homework yesterday.
このように、 yesterday と現在完了形をそのまま組み合わせるのは普通ではありません。
なぜなら、 yesterday は出来事を過去の時点に置く言葉だからです。
現在完了形は、過去の出来事を現在につなげて見る形です。
そのため、 具体的な過去時点を強く出したいなら、過去形を使うのが自然です。
「もう」「まだ」「ちょうど」と現在完了形
現在完了形は、 already、 yet、 just などともよく使われます。
I have already finished my homework.
これは、 「私はもう宿題を終えた」 という意味です。
今の時点で、宿題は終わっている。
だから、現在完了形と相性がよいです。
Have you eaten dinner yet?
これは、 「もう夕食を食べた?」 という意味です。
今の時点で、夕食が済んでいるかを聞いています。
I have just finished it.
これは、 「ちょうどそれを終えたところだ」 という意味です。
過去に終えた出来事が、 かなり近い現在につながっています。
このように、 現在完了形は 「今の時点でどうなっているか」 を表す語と相性がよいです。
日本語の「た」に引っ張られすぎない
日本語では、 「食べた」 「終わった」 「決めた」 「なくした」 のように、かなり広く「た」を使います。
そのため、英語にするときも、 つい全部過去形にしたくなります。
しかし、英語では、 同じ「た」でも見方が分かれます。
- 過去の出来事として述べるなら、過去形
- 今の状態・結果につなげるなら、現在完了形
たとえば、 「鍵をなくした」 という日本語も、文脈によって変わります。
I lost my key yesterday.
これは、 「昨日、鍵をなくした」 という過去の出来事です。
I have lost my key.
これは、 「鍵をなくして、今もない」 という現在の困った状態が見えます。
日本語ではどちらも 「鍵をなくした」 と訳せます。
しかし、英語では、 過去の出来事として見るのか、 今につながる結果として見るのかが違います。
迷ったら「今、何を伝えたいのか」を考える
現在完了形と過去形で迷ったら、 まず次のように考えるとよいです。
過去のいつ・何が起きたかを言いたいのか。
それとも、今どうなっているかを言いたいのか。
過去の出来事そのものを話したいなら、過去形。
今の結果や状態につなげたいなら、現在完了形。
もちろん、実際の英語では地域差・文体差・会話の流れもあります。
すべてを一つのルールで機械的に決めることはできません。
それでも、 過去を見るか、今につなげるか という視点を持っておくと、 現在完了形はかなり理解しやすくなります。
今回のまとめ
今回は、現在完了形と過去形の違いを整理しました。
日本語では、 「ご飯食べた?」 「受験することに決めた」 「鍵をなくした」 のように、どれも「た」で表せます。
しかし、英語では見方が変わります。
- 過去形 は、出来事を過去のこととして置く。
- 現在完了形 は、過去の出来事を今につなげて見る。
Did you eat dinner? は、過去に食べたかを聞いています。
Have you eaten dinner? は、今の時点で食事が済んでいるかを聞いています。
I decided to take the entrance exam. は、決めた出来事を過去のこととして述べています。
I have decided to take the entrance exam. は、決めた結果、今はその決定になっていることを表します。
現在完了形は、過去分詞を使うので過去っぽく見えます。
しかし、形の中心にある have は現在形です。
だから、現在完了形は、 過去の出来事を現在に引きつけて見る形 だと考えるとわかりやすいです。
日本語の「た」に引っ張られすぎず、 英語では 過去を見るのか、今につなげるのか を考える。
それが、現在完了形と過去形を使い分けるための大事な視点です。