英語の enough は、「十分な」「十分に」と訳されることが多い単語です。
意味だけを見ると、それほど難しそうには見えません。
しかし、実際に英文を作ろうとすると、意外と語順で迷います。
old enough
enough time
どちらも enough を使っています。
しかし、一方では形容詞の後ろに置かれています。
もう一方では、名詞の前に置かれています。
なぜ、 enough old ではなく old enough なのか。
なぜ、 time enough ではなく enough time が普通なのか。
今回は、この enough の語順を整理していきます。
まずは基本の意味を押さえる
enough の基本的な意味は、 「必要なだけある」 「不足していない」 ということです。
日本語では、 「十分な」 「十分に」 と訳すことが多いです。
I have enough money.
これは、 「私は十分なお金を持っている」 という意味です。
ここでは、お金が必要な量に達していることを表しています。
This box is big enough.
これは、 「この箱は十分に大きい」 という意味です。
箱の大きさが、必要な条件を満たしているわけです。
つまり、 enough は、単に「たくさん」という意味ではありません。
大事なのは、 必要な基準に届いている という感覚です。
この感覚を持っておくと、 enough to do の形も理解しやすくなります。
名詞を修飾するときは enough + 名詞
まず、名詞を修飾する enough から見ていきます。
名詞を修飾するとき、 enough は基本的に名詞の前に置きます。
enough time
十分な時間
enough money
十分なお金
enough food
十分な食べ物
enough chairs
十分な数の椅子
この場合の enough は、 名詞の量を表しています。
時間が十分にある。
お金が十分にある。
食べ物が十分にある。
椅子の数が十分にある。
つまり、 後ろに来る名詞について、 「必要なだけある」と言っているわけです。
このときは、 enough + 名詞 と考えれば大丈夫です。
名詞を修飾するときは、 enough + 名詞
形容詞を修飾するときは 形容詞 + enough
次に、形容詞を修飾する enough です。
ここで語順が変わります。
形容詞を修飾するとき、 enough は形容詞の後ろに置きます。
old enough
十分に年を取っている
big enough
十分に大きい
strong enough
十分に強い
good enough
十分によい
ここでは、 enough old とは言いません。
基本は、 old enough です。
なぜなら、この enough は、名詞の量を表しているのではなく、 形容詞の程度を表しているからです。
old enough は、 「年齢の高さが十分な程度に達している」 ということです。
big enough は、 「大きさが十分な程度に達している」 ということです。
つまり、形容詞が表す性質について、 必要な基準に届いているかを示しているわけです。
形容詞を修飾するときは、 形容詞 + enough
副詞を修飾するときも 副詞 + enough
enough は、形容詞だけでなく、副詞を修飾することもあります。
この場合も、語順は同じです。
副詞の後ろに enough を置きます。
fast enough
十分に速く
carefully enough
十分に注意深く
quickly enough
十分に素早く
たとえば、次の文を見てください。
He ran fast enough to win the race.
これは、 「彼はそのレースに勝てるくらい十分速く走った」 という意味です。
fast という副詞の程度が、 勝つために必要な基準に届いているわけです。
ここでも、 enough fast ではありません。
fast enough です。
副詞を修飾するときも、 副詞 + enough
名詞の前、形容詞・副詞の後ろ
ここまでを整理すると、 enough の語順はかなりシンプルです。
- enough + 名詞
- 形容詞 + enough
- 副詞 + enough
つまり、 名詞を修飾するときは前。
形容詞・副詞を修飾するときは後ろ。
これが基本です。
enough time
old enough
quickly enough
この3つを並べて覚えておくと、 かなりミスが減ります。
特に中学生・高校生が間違えやすいのは、 enough old のような語順です。
日本語では「十分に年を取っている」と言うので、 つい「十分に」にあたる enough を先に置きたくなります。
しかし、英語では old enough です。
ここはかなり大事です。
enough to do は「〜するのに十分」
enough では、 to 不定詞 と一緒に使う形もよく出てきます。
old enough to drive
tall enough to reach the shelf
enough money to buy a new computer
どれも、 「〜するのに十分」 という意味です。
old enough to drive は、 「運転するのに十分な年齢である」 ということです。
tall enough to reach the shelf は、 「棚に届くのに十分背が高い」 ということです。
enough money to buy a new computer は、 「新しいコンピューターを買うのに十分なお金」 ということです。
ここで大事なのは、 to do が「何をするのに十分なのか」を示していることです。
ただ old enough と言えば、 「十分な年齢である」と言っているだけです。
そこに to drive をつけると、 「運転するのに十分な年齢である」 と具体化されます。
enough to do は、 「〜するのに十分」と考える。
too ... to と比べるとわかりやすい
enough to do は、 too ... to と比べると理解しやすくなります。
He is old enough to drive.
これは、 「彼は運転するのに十分な年齢だ」 という意味です。
つまり、条件を満たしています。
He is too young to drive.
これは、 「彼は若すぎて運転できない」 という意味です。
つまり、条件を満たしていません。
enough は、基準に届いている。
too は、基準を超えすぎて問題がある。
このように見ると、 enough の「十分」という感覚がつかみやすくなります。
ただし、この記事では too ... to の詳しい説明には入りません。
今回の中心は、 あくまで enough の語順です。
enough of は少し別で考える
enough には、 enough of という形もあります。
enough of the story
enough of them
これは、 enough + 名詞 とは少し違います。
enough time のように、 ふつうの名詞を直接修飾する場合は enough + 名詞 です。
enough time
enough money
一方で、 the story や them のように、 すでに特定されたものや代名詞が来る場合は、 enough of の形になります。
enough of the story
enough of them
ここでの of は、 全体の中から必要な分を取り出すような働きをしています。
ただし、この話も深追いすると of の用法に戻ってしまいます。
今回は、 enough of + 特定された名詞・代名詞 という形もある、くらいで押さえておけば十分です。
time enough という形もあるが、普通は enough time
ここで、少しややこしい話を一つだけ入れておきます。
英語には、 time enough のように、 名詞の後ろに enough が来る形もあります。
There will be time enough.
ただし、現代英語の学習者がまず覚えるべき基本は、 enough time です。
名詞の後ろに enough を置く形は、古風に聞こえたり、かなり限られた表現に見えたりします。
そのため、中高生の英作文では、 基本的に enough + 名詞 を使えば大丈夫です。
基本は enough time 。 time enough は例外的・やや古風な形として見ておく。
こういう例外を最初から覚えすぎると、かえって混乱します。
まずは基本の語順をしっかり押さえたほうがよいです。
なぜ語順が変わるのか
では、なぜ enough は、名詞の前に来たり、形容詞の後ろに来たりするのでしょうか。
ここは、品詞で考えると整理しやすいです。
名詞の前に置かれる enough は、名詞の量を限定しています。
enough money
これは、 「どれくらいのお金か」 を示しています。
つまり、名詞の前で数量を限定しているわけです。
一方、 形容詞や副詞の後ろに置かれる enough は、程度を表しています。
good enough
fast enough
これは、 「どれくらいよいのか」 「どれくらい速いのか」 を示しています。
つまり、形容詞や副詞が表す性質・程度について、 必要な基準に達していることを表しているわけです。
だから、語順だけを丸暗記するより、 次のように考えるとわかりやすいです。
名詞の量を言うときは、 enough + 名詞
性質や動作の程度を言うときは、 形容詞・副詞 + enough
よくある間違い
最後に、よくある間違いを整理しておきます。
まず多いのは、 形容詞の前に enough を置いてしまう間違いです。
× He is enough old to drive.
○ He is old enough to drive.
日本語の「十分に年を取っている」に引っ張られると、 enough old としたくなります。
しかし、英語では old enough です。
次に、名詞の後ろに enough を置いてしまう間違いです。
× I don't have time enough.
○ I don't have enough time.
先ほど見たように、 time enough という形が完全に存在しないわけではありません。
しかし、普通の英作文では enough time を使うのが安全です。
基本としては、 名詞の前、形容詞・副詞の後ろ と覚えておくのがよいです。
今回のまとめ
今回は、 enough の語順について整理しました。
enough は、「必要なだけある」「基準に届いている」という意味を表します。
ただし、何を修飾するかによって語順が変わります。
- enough + 名詞:enough time, enough money
- 形容詞 + enough:old enough, big enough
- 副詞 + enough:fast enough, carefully enough
名詞を修飾するときは、名詞の前。
形容詞や副詞を修飾するときは、後ろ。
まずは、これをしっかり押さえれば大丈夫です。
また、 enough to do は「〜するのに十分」と考えるとわかりやすくなります。
- old enough to drive:運転するのに十分な年齢
- tall enough to reach the shelf:棚に届くのに十分背が高い
- enough money to buy it:それを買うのに十分なお金
例外的に time enough のような形もありますが、 学習者はまず enough time を基本として覚えればよいです。
enough は、意味だけなら簡単に見える単語です。
しかし、語順まで含めて見ると、なかなか英語らしい単語です。
「十分に」という日本語に引っ張られすぎず、 英語では 何を修飾しているのか を見て、位置を判断する。
それが、 enough を使うときの一番大事なポイントです。