英語の of は、日本語ではよく「〜の」と訳されます。
そのため、いろいろな of を見ると、どれも同じように見えてしまうことがあります。
たとえば、次の2つを見てください。
the arrival of the train
電車の到着
the destruction of the city
都市の破壊
どちらも日本語では「〜の」と訳せます。
しかし、この2つの of は、同じように見えて、内部の関係が違います。
the arrival of the train では、到着するのは電車です。
一方、 the destruction of the city では、破壊するのは都市ではありません。
都市は、破壊される側です。
この違いを見るときに役立つのが、 主格の of と 目的格の of という考え方です。
この記事では、難しい理論に入りすぎず、 「同じ of でも、意味上の関係が違う」 というところを整理していきます。
まず、名詞に動詞的な意味が残ることがある
いきなり 主格の of や 目的格の of と言われても、少しわかりにくいと思います。
まず確認したいのは、 名詞の中に、動詞的な意味が残ることがある という点です。
たとえば、 arrival は「到着」という名詞です。
しかし、 arrival は arrive という動詞と関係しています。
The train arrived.
電車が到着した。
the arrival of the train
電車の到着
下の表現では、文ではなく名詞句になっています。
しかし、 arrival の中には、 「到着する」という出来事の意味が残っています。
つまり、 arrival はただの「ものの名前」ではなく、 ある出来事を名詞として表しているわけです。
このような名詞を考えるときには、 もとの動詞に戻してみると関係が見えやすくなります。
主格の of は、意味上の主語に近い
まず、 主格の of から見ていきます。
例は、先ほどのこれです。
the arrival of the train
日本語では「電車の到着」と訳せます。
ただし、この「電車の」は、ただの所有ではありません。
電車が到着を所有しているわけではありません。
ここでは、 the train が arrival という出来事の主体になっています。
動詞の文に戻すと、こうなります。
The train arrived.
この文では、 the train は主語です。
つまり、 the arrival of the train の the train は、 動詞に戻したときに主語にあたるような関係にあります。
これが、 主格の of と呼ばれる関係です。
ただし、ここは注意が必要です。
the arrival of the train は、文ではありません。
あくまで名詞句です。
そのため、 the train が文法上の主語になっているわけではありません。
正確には、 意味上の主語に近い働きをしている と考えたほうがよいです。
主格の of の例
主格の of は、ほかにも見ることができます。
the arrival of the guests
客たちの到着
これは、 The guests arrived. に近い関係です。
到着したのは、客たちです。
the growth of the city
その都市の成長
これは、 The city grew. に近い関係です。
成長したのは、その都市です。
the fall of the empire
その帝国の滅亡
これは、 The empire fell. に近い関係です。
滅びたのは、その帝国です。
どれも、 of の後ろの名詞が、 もとの動詞に戻したときの主語に近い働きをしています。
だから、 主格の of と考えることができます。
目的格の of は、意味上の目的語に近い
次に、 目的格の of です。
こちらの代表例は、次のような表現です。
the destruction of the city
日本語では「都市の破壊」と訳せます。
しかし、ここで注意したいのは、 破壊するのは都市ではない、という点です。
都市は、破壊される側です。
動詞の文に戻すと、次のように考えられます。
Someone destroyed the city.
この文では、 the city は destroy の目的語です。
つまり、 the destruction of the city の the city は、 動詞に戻したときに目的語にあたるような関係にあります。
これが、 目的格の of と呼ばれる関係です。
ここでも、 the city が文法上の目的語そのものになっているわけではありません。
the destruction of the city は名詞句だからです。
ただし、意味の関係としては、 destroy the city の目的語に近い。
だから、 目的格の of と整理できます。
目的格の of の例
目的格の of も、いくつか例を見てみます。
the discovery of America
アメリカの発見
これは、 Someone discovered America. に近い関係です。
発見したのはアメリカではありません。
アメリカは、発見された対象です。
the construction of the bridge
その橋の建設
これは、 Someone constructed the bridge. に近い関係です。
橋は建設する側ではなく、建設される対象です。
the explanation of the rule
その規則の説明
これは、 Someone explained the rule. に近い関係です。
規則は説明する側ではなく、説明される内容です。
このように、 of の後ろの名詞が、 もとの動詞に戻したときの目的語に近い働きをすることがあります。
これが目的格の of です。
同じ「〜の」でも、中身は違う
ここで、最初の2つをもう一度並べます。
the arrival of the train
電車の到着
the destruction of the city
都市の破壊
どちらも日本語では「〜の」と訳せます。
しかし、英語の関係としては同じではありません。
the arrival of the train では、電車が到着します。
The train arrived.
つまり、 the train は意味上の主語に近いです。
一方、 the destruction of the city では、都市が破壊するのではありません。
Someone destroyed the city.
つまり、 the city は意味上の目的語に近いです。
この違いは、日本語の「の」だけを見ていると見えにくいです。
だからこそ、 英語では of の後ろの名詞が、前の名詞とどんな関係を作っているのかを見る必要があります。
見分けるコツは、動詞に戻してみること
主格の of と目的格の of を見分けるときは、 前の名詞を動詞に戻してみるとわかりやすいです。
たとえば、 arrival なら arrive に戻します。
the arrival of the train
これを文に戻すと、
The train arrived.
となります。
the train は主語になります。
だから、主格的な関係です。
次に、 destruction なら destroy に戻します。
the destruction of the city
これを文に戻すと、
Someone destroyed the city.
となります。
the city は目的語になります。
だから、目的格的な関係です。
このように、 名詞を動詞に戻してみる と、 関係がかなり見えやすくなります。
ただし、すべてがきれいに分かれるわけではない
ここで少し注意も必要です。
主格の of と目的格の of は、便利な分類です。
しかし、すべての of がきれいに主格か目的格に分かれるわけではありません。
たとえば、 the picture of the boy は文脈によって意味が変わります。
「その少年を描いた絵」かもしれません。
あるいは、「その少年が所有している絵」かもしれません。
また、 the fear of the enemy のような表現も、文脈によって解釈が変わります。
「敵を恐れること」なのか。
「敵が抱いている恐怖」なのか。
どちらにも読める場合があります。
つまり、 of の関係は、形だけで完全に決まるわけではありません。
名詞の意味、文脈、常識、前後の情報によって決まることもあります。
だから、分類を暗記するというより、 関係を読み取るための補助線 として使うのがよいです。
「主格」「目的格」という名前に引っ張られすぎない
もう一つ大事なことがあります。
それは、 主格 や 目的格 という名前に引っ張られすぎないことです。
ここで言う主格の of は、 of の後ろの名詞が、本当に文法上の主語になっているという意味ではありません。
目的格の of も同じです。
of の後ろの名詞が、本当に文法上の目的語になっているわけではありません。
あくまで、 動詞的な意味を持つ名詞に対して、意味上どのような関係を持っているか の話です。
したがって、この記事では、 「文法上の主語」 「文法上の目的語」 ではなく、 意味上の主語に近い 、 意味上の目的語に近い という言い方をしています。
このほうが、誤解が少ないと思います。
所有の of とは何が違うのか
ここまで見てくると、 所有の of との違いも気になるかもしれません。
たとえば、次のような表現です。
the roof of the house
その家の屋根
the door of the room
その部屋のドア
これらは、前の名詞が後ろの名詞に属している関係です。
屋根は家に属しています。
ドアは部屋に属しています。
ここでは、 roof や door を動詞に戻して考える必要はあまりありません。
一方、 arrival や destruction は、動詞的な意味を持っています。
arrival は arrive と関係しています。
destruction は destroy と関係しています。
このように、 動詞的な意味を持つ名詞が出てきたとき、 主格の of や目的格の of という見方が役に立ちます。
英文解釈ではかなり役に立つ
この話は、単なる文法分類ではありません。
英文解釈でもかなり役に立ちます。
たとえば、長い英文の中で、 次のような表現が出てきたとします。
the rapid growth of the population
これを「人口の急速な成長」と訳すだけでも、意味は取れます。
しかし、もう一歩踏み込むなら、 「人口が急速に増えた」という関係です。
The population grew rapidly.
つまり、 the population は意味上の主語に近いです。
一方、次の表現はどうでしょうか。
the rapid destruction of the forest
これは「森の急速な破壊」と訳せます。
しかし、森が破壊しているわけではありません。
森は破壊される対象です。
Someone destroyed the forest rapidly.
つまり、 the forest は意味上の目的語に近いです。
この違いがわかると、 名詞表現の中に隠れている動作関係が見えやすくなります。
英文は、動詞だけで動きを表すわけではありません。
名詞の中に、出来事や動作が圧縮されていることがあります。
その圧縮された関係を読み解くときに、 主格の of と目的格の of はかなり役に立ちます。
日本語訳では同じに見えるからこそ注意する
日本語の「の」は、とても便利な言葉です。
いろいろな関係を「の」でつなぐことができます。
だから、 英語の of も、日本語ではかなり広く「〜の」と訳せます。
しかし、そのせいで、英語の関係が見えにくくなることもあります。
the arrival of the train
the destruction of the city
どちらも「〜の」と訳せます。
しかし、一方は「電車が到着する」。
もう一方は「都市が破壊される」。
関係はまったく同じではありません。
ここを見落とすと、 英文の構造は読めているようで、実は意味関係を取り違えてしまうことがあります。
「〜の」と訳せるから大丈夫、ではなく、 その「の」は、どんな関係を表しているのか を考えることが大切です。
今回のまとめ
今回は、 主格の of と 目的格の of について整理しました。
どちらも表面上は、 名詞 + of + 名詞 という形をしています。
しかし、 of の後ろの名詞が、前の名詞に対してどのような関係を持つかは同じではありません。
- the arrival of the train :電車が到着する
- the destruction of the city :都市が破壊される
前者では、 the train が arrival に対して意味上の主語に近い関係を持っています。
後者では、 the city が destruction に対して意味上の目的語に近い関係を持っています。
見分けるコツは、 前の名詞を動詞に戻してみることです。
- arrival → arrive
- destruction → destroy
そして、 of の後ろの名詞が、動詞に戻したときに主語になるのか、目的語になるのかを考えます。
ただし、これはあくまで補助線です。
すべての of がきれいに主格・目的格に分かれるわけではありません。
文脈によって解釈が変わる表現もあります。
それでも、この見方を知っておくと、 日本語の「〜の」だけでは見えなかった英語の関係が見えてきます。
of は、ただの「〜の」ではありません。
ときには、名詞の中に隠れた主語や目的語の関係を示すことがあります。
ここが見えると、英語の名詞表現はかなり読みやすくなります。