塾長ノート

仮定法とは何か

現実から距離を取る文法

英語学習で 仮定法 という言葉を聞くと、多くの人は If I were you のような文を思い浮かべると思います。

If I were you, I would study harder.
もし私があなたなら、もっと一生懸命勉強するでしょう。

学校英語では、仮定法はかなり難しい単元として扱われます。

ただし、仮定法を単に if を使う特殊構文 として覚えると、全体像が見えにくくなります。

仮定法は、本来、 の一つです。

直説法が内容を現実のこととして述べるのに対して、 仮定法は現実から距離を取って、仮定・想像・願望などを表します。

今回は、英語の仮定法を、 現実から距離を取る文法 として整理していきます。

仮定法は「もし〜なら」の文法だけではない

仮定法というと、まず if の文が出てきます。

If I had money, I would buy a new computer.
もしお金があれば、新しいコンピューターを買うのに。

もちろん、これは仮定法の代表的な形です。

しかし、仮定法の中心は、

if を使うこと

そのものではありません。

大事なのは、

現実とは違うこと
現実には起きていないこと
現実から距離を取った想像

を表しているという点です。

つまり、仮定法は 現実との距離 を表す文法です。

直説法と仮定法の違い

まず、直説法と比べてみます。

He is here.
彼はここにいます。

この文は、彼がここにいることを現実のこととして述べています。

これは直説法です。

一方で、次の文を見てください。

If he were here, we could ask him.
もし彼がここにいたら、彼に聞けるのに。

この文では、彼が実際にここにいるとは言っていません。

むしろ、彼がここにいないからこそ、

もし彼がここにいたら

と想像しています。

つまり、

見方
He is here. 直説法 現実として述べる
If he were here... 仮定法 現実から距離を取って想像する

という違いがあります。

過去形は「過去」だけではない

仮定法を理解するときに大事なのが、 過去形 の感覚です。

英語では、過去形が単に過去の時間を表すだけでなく、 現実からの距離を表すことがあります。

If I had time, I would help you.
もし時間があれば、あなたを手伝うのに。

この文の had は、単純に過去の話をしているわけではありません。

今、時間がない。

その現実から距離を取って、

もし時間があるとしたら

と仮定しています。

つまり、ここでの過去形は、

時間的な過去

というより、

現実からの距離

を表しています。

If I were you の were

仮定法の代表例が、 If I were you です。

If I were you, I would apologize.
もし私があなたなら、謝るでしょう。

現代英語では、普通の直説法なら I was になります。

I was tired yesterday.
私は昨日疲れていました。

しかし、仮定法では伝統的に If I were you と言います。

これは、実際には私はあなたではないからです。

現実とは違う状況を想像しているので、 直説法とは違う形が使われています。

つまり、 were は、単なる過去ではなく、 現実から距離を取る印として働いています。

ここが仮定法の重要なポイントです。

would は仮定の世界の助動詞

仮定法では、 would もよく使われます。

If I had money, I would buy a car.
もしお金があれば、車を買うのに。

この文では、 I would buy a car が、仮定の世界での結果を表しています。

現実にはお金がない。

でも、もしお金がある世界を想像するなら、その世界では車を買うだろう。

そういう意味です。

ここでの would も、単純な過去ではありません。

will よりも現実から距離を取った形として、 仮定の世界での結果を表しています。

仮定法過去とは何か

学校英語では、 仮定法過去 という言葉が出てきます。

If I had time, I would help you.

この文は、現在の事実に反する仮定を表すことが多いです。

つまり、

実際には時間がない。
でも、もし時間があるなら手伝うのに。

という意味です。

ここでややこしいのは、 仮定法過去 という名前です。

「過去」とついていますが、必ずしも過去の話ではありません。

現在の現実から距離を取るために、過去形を使っているのです。

つまり、仮定法過去の「過去」は、

時間としての過去

だけでなく、

現実からの距離

として理解するとわかりやすくなります。

仮定法過去完了とは何か

もう一つ、 仮定法過去完了 という形もあります。

If I had studied harder, I would have passed the exam.
もしもっと一生懸命勉強していたら、試験に合格していただろう。

この文では、過去の事実に反する仮定を表しています。

実際には、十分に勉強しなかった。

そして、試験にも合格しなかった。

その現実に対して、

もしもっと勉強していたら

と、過去の別の可能性を想像しています。

ここでは、過去の出来事に対して距離を取っているため、 had studiedwould have passed が使われます。

仮定法過去完了は、

過去の現実とは違うことを想像する形

だと考えるとわかりやすいです。

仮定法は「気持ち」も表す

仮定法は、単に条件を述べるだけではありません。

そこには、願望や後悔、現実への距離感が出ることがあります。

I wish I had more time.
もっと時間があればいいのに。

この文では、実際には時間が十分にありません。

だから、

もっと時間があればいいのに

と願っています。

I wish I had studied harder.
もっと一生懸命勉強していればよかった。

こちらは、過去への後悔です。

実際には十分に勉強しなかった。

その現実とは違う過去を想像しているわけです。

このように、仮定法は、

現実とは違うことを想像する
そうであればよいと願う
そうであればよかったと後悔する

という気持ちとも関わります。

仮定法と丁寧さ

仮定法の距離感は、丁寧さにもつながります。

Can you help me?
手伝ってくれますか。
Could you help me?
手伝っていただけますか。

could は can の過去形ですが、ここでは単純な過去を表しているわけではありません。

相手への依頼を少し遠回しにしています。

同じように、

Will you open the window?
Would you open the window?

では、would のほうが丁寧に聞こえます。

過去形が持つ距離感が、相手との心理的な距離を作り、 直接的すぎない表現になるからです。

ここでも、過去形は単に過去を表しているのではありません。

現実からの距離、相手との距離、直接性の弱さを表しています。

仮定法を「if構文」とだけ見ない

仮定法を学ぶときに大事なのは、 if構文だけに閉じ込めない ことです。

もちろん、

If I were you...

は仮定法の代表です。

しかし、仮定法の感覚は、

  • I wish ...
  • as if ...
  • would / could を使った依頼
  • 現実から距離を取る過去形

にも広がっています。

つまり、仮定法の中心は、

if があるかどうか

ではなく、

現実から距離を取っているかどうか

です。

学習者はどう覚えればよいか

学習者向けには、まず次のように整理するとよいです。

仮定法は、現実から距離を取る文法である。

そして、過去形は必ずしも過去を表すだけではありません。

If I had time, I would help you.

この文では、had は現在の現実から距離を取っています。

If I had studied harder, I would have passed the exam.

この文では、過去の現実から距離を取っています。

つまり、

  • 仮定法過去:現在の現実から距離を取る
  • 仮定法過去完了:過去の現実から距離を取る

と考えるとわかりやすいです。

まとめ

仮定法 とは、現実から距離を取って、仮定・想像・願望・後悔などを表す法です。

  • 仮定法は、if を使う特殊構文だけではない
  • 仮定法の中心は、現実から距離を取ることにある
  • 直説法は現実のこととして述べる
  • 仮定法は現実とは違うことを想像する
  • 仮定法過去は、現在の現実から距離を取る
  • 仮定法過去完了は、過去の現実から距離を取る
  • 過去形は、時間的な過去だけでなく、心理的・現実的な距離を表すことがある
  • would や could は、仮定や丁寧さとも関係する

仮定法は、単なる暗記項目として見ると難しく感じます。

しかし、

現実から距離を取る

という感覚で見ると、かなり整理しやすくなります。

If I were you. I wish I had more time. Could you help me?

これらは一見別々の文法に見えます。

しかし、どれも現実や相手との間に距離を作る表現としてつながっています。

仮定法を理解することは、英語の モダリティ を理解するうえで、とても大切な入口になります。

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