前回の記事では、 直説法 について整理しました。
直説法は、文の内容を事実や現実の出来事として述べる法です。
He is here.
彼はここにいます。
She lives in Tokyo.
彼女は東京に住んでいます。
これらは、文の内容を現実のこととして提示しています。
今回扱うのは、 命令法 です。
Open the door.
ドアを開けなさい。
Be quiet.
静かにしなさい。
命令法は、事実を述べる文ではありません。
まだ起きていない行動を、相手に求める文です。
今回は、英語の命令法を、 事実を述べる直説法との違い から整理していきます。
命令法は「行動を求める」法
命令法とは、相手に行動を求める法です。
Open the window.
窓を開けなさい。
Come here.
ここに来なさい。
Be careful.
気をつけなさい。
これらの文は、現実にすでに起きていることを述べているわけではありません。
話し手が、聞き手に何かをしてほしいと求めています。
たとえば、
Open the window.
は、 あなたが窓を開けている という事実を述べている文ではありません。
まだ開いていない窓を、 これから開けるように相手に求めています。
つまり、命令法は、
現実の描写ではなく、聞き手への働きかけ
です。
主語 you が省略される
英語の命令文では、ふつう主語を出しません。
Open the door.
この文には、見た目の上では主語がありません。
しかし、意味としては、
You open the door.
に近いです。
つまり、命令文の相手は基本的に you です。
ただし、普通の命令文では、その you は言わなくてもわかります。
Sit down.
座りなさい。
Listen carefully.
注意して聞きなさい。
Write your name here.
ここに名前を書きなさい。
どれも、聞き手に向かって行動を求めています。
だから、主語 you はふつう省略されます。
動詞は原形になる
命令文では、動詞は原形になります。
Open the door.
Be quiet.
Study hard.
三単現の s も、過去形も、to 不定詞も使いません。
たとえば、
Opens the door.
とは言いません。
また、
To open the door.
だけでは、普通の命令文にはなりません。
命令法では、動詞の原形をそのまま前に出します。
Go.
行きなさい。
Wait.
待ちなさい。
Try again.
もう一度やってみなさい。
このように、命令法の形はとてもシンプルです。
しかし、その文の働きは、直説法とは大きく違います。
直説法との違い
命令法は、直説法と比べるとわかりやすくなります。
You open the door.
あなたはドアを開けます。
Open the door.
ドアを開けなさい。
最初の文は、直説法です。
「あなたがドアを開ける」という内容を述べています。
一方、2つ目の文は、命令法です。
「ドアを開ける」という行動を、相手に求めています。
つまり、
| 文 | 法 | 働き |
|---|---|---|
| You open the door. | 直説法 | 事実・内容を述べる |
| Open the door. | 命令法 | 相手に行動を求める |
です。
同じ open the door でも、文の出し方が違います。
直説法は、現実のこととして述べる。
命令法は、相手に行動を起こさせようとする。
ここが大きな違いです。
Be quiet. の be はなぜ原形なのか
命令文で少し注意したいのが、 be です。
Be quiet.
静かにしなさい。
Be careful.
気をつけなさい。
Be honest.
正直でいなさい。
ここでは、 is や are ではなく、 be が使われています。
なぜなら、命令法では動詞の原形を使うからです。
普通の直説法なら、
You are quiet.
です。
しかし、命令法では、
Be quiet.
になります。
これは、
静かである状態になりなさい
という働きかけです。
つまり、 Be quiet. は、相手の現在の状態を述べているのではありません。
相手に、これから静かな状態になるよう求めている文です。
否定命令は Don't を使う
命令文を否定するときは、 Don't を使います。
Don't run.
走ってはいけません。
Don't touch it.
それに触らないで。
Don't be late.
遅れないで。
これは、 〜するな という禁止を表します。
普通の否定文では、
You do not run.
のように、主語と do not を使います。
しかし、命令法では、
Don't run.
とします。
ここでも、文は事実を述べているのではありません。
相手に対して、
その行動をしないように
求めています。
つまり、否定命令は 禁止 の働きを持っています。
Please をつけると依頼に近づく
命令文は、言い方によっては強く聞こえます。
Open the door.
これは、文脈によってはかなり直接的です。
そこで、 please をつけると、依頼に近づきます。
Please open the door.
ドアを開けてください。
Please wait here.
ここで待ってください。
please をつければ必ず丁寧になる、というわけではありません。
言い方や場面によっては、please があっても命令的に聞こえることがあります。
しかし、少なくとも形としては、相手に対する働きかけをやわらげることができます。
つまり、命令法は、
命令
依頼
注意
案内
など、さまざまな働きを持つことがあります。
命令文はいつも強いわけではない
命令法という名前だけ聞くと、 すべて強い命令のように感じるかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。
Have a nice day.
よい一日を。
Take care.
気をつけてね。
Enjoy your trip.
旅行を楽しんでね。
これらも形としては命令文です。
しかし、相手に強く命令しているわけではありません。
むしろ、願いや挨拶に近いです。
つまり、命令法は、
相手に行動を求める形
ではありますが、その働きは文脈によって変わります。
命令になることもあれば、 依頼・助言・案内・励まし・挨拶になることもあります。
命令法とモダリティ
命令法は、モダリティとも深く関係します。
直説法では、文の内容を事実として述べます。
You study English.
一方、命令法では、相手に行動を求めます。
Study English.
ここでは、話し手が聞き手に対して、
勉強しなさい
勉強してほしい
勉強するべきだ
という働きかけをしています。
つまり、命令法には、 話し手が聞き手に働きかける態度 が含まれています。
これは、モダリティの一種として見ることができます。
文の内容そのものではなく、 その内容を相手にどう出しているのか。
そこに命令法の意味があります。
Let's も命令法に近い
命令法に近い表現として、 Let's があります。
Let's go.
行きましょう。
Let's start.
始めましょう。
Let's think about this problem.
この問題について考えてみましょう。
Let's は、 let us から来ています。
直訳すれば、
私たちに〜させてください
のような形です。
現代英語では、 一緒に〜しよう という勧誘の表現として使います。
普通の命令文は、聞き手に行動を求めます。
Go.
一方、
Let's go.
は、話し手と聞き手を含めた 私たち に行動を向けます。
その意味で、Let's は命令法と近い働きを持ちながら、 より協同的な表現だと言えます。
命令法は未来に向かっている
命令法は、時制の点でも少し面白いです。
Open the door.
この文は、現在の事実を述べているのではありません。
話し手は、聞き手がこれからドアを開けることを求めています。
つまり、命令法は基本的に未来に向かっています。
まだ起きていない行動を、これから起こすように求める
これが命令法です。
そのため、命令法は 事実の描写 というより、 現実を変えようとする文 だと言えます。
ここは直説法との大きな違いです。
学習者はどう覚えればよいか
学習者向けには、命令法を次のように覚えるとよいです。
命令法は、相手に行動を求める文の形である。
形としては、動詞の原形を使います。
Open the door.
Be quiet.
Don't run.
また、命令文は必ずしも強い命令ではありません。
Please sit down.
Take care.
Have a nice day.
のように、依頼・気遣い・挨拶として使われることもあります。
大事なのは、命令法を 事実を述べる文ではなく、相手に働きかける文 として見ることです。
まとめ
命令法 とは、相手に行動を求める法です。
- 命令法は、文の内容を事実として述べるのではない
- 命令法は、聞き手に行動を求める
- 英語の命令文では、ふつう主語 you が省略される
- 命令文では、動詞の原形を使う
- 否定命令では Don't を使う
- Please をつけると依頼に近づくことがある
- 命令文は、命令だけでなく、依頼・注意・挨拶・励ましにも使われる
- 命令法は、現実を述べるのではなく、これからの行動に働きかける
直説法は、内容を現実のこととして述べます。
You open the door.
一方、命令法は、相手に行動を求めます。
Open the door.
この違いを押さえると、命令法はかなり理解しやすくなります。
命令法は、単なる「命令の文」ではありません。
相手に何かをしてほしい。 相手に注意してほしい。 相手と一緒に何かを始めたい。
そうした聞き手への働きかけを表す法として見ると、 命令法の意味がよりはっきり見えてきます。