前回の記事では、英語の 法 について大きく整理しました。
法とは、文の内容をどのような態度で提示するかに関わる文法カテゴリーです。
その中でも、もっとも基本になるのが 直説法 です。
He is here.
彼はここにいます。
She lives in Tokyo.
彼女は東京に住んでいます。
It rained yesterday.
昨日は雨が降りました。
これらは、すべて直説法の文です。
ただ、英語学習では、直説法はあまり意識されません。
なぜなら、英語の多くの文が直説法であり、あまりにも普通に使われているからです。
今回は、 直説法とは何か を、仮定法や命令法との違いも含めて整理していきます。
直説法は「事実として述べる」法
直説法とは、文の内容を 事実・現実の出来事として述べる 法です。
The sun rises in the east.
太陽は東から昇ります。
My brother plays soccer.
私の兄はサッカーをします。
I saw him yesterday.
私は昨日彼に会いました。
これらの文は、話し手が内容を現実のこととして提示しています。
もちろん、話し手が間違っている可能性はあります。
たとえば、
He lives in Osaka.
と言ったとしても、実際には彼が京都に住んでいる可能性はあります。
しかし、文の形としては、 彼が大阪に住んでいることを事実として述べている わけです。
直説法とは、真実かどうかを保証する形ではありません。
あくまで、 話し手が文の内容を現実のこととして提示する形 です。
直説法は「普通の文」として現れる
英語では、直説法はとても普通に使われます。
I am a teacher.
You are busy.
She likes music.
They went to the park.
こうした文を、学校ではふつう 直説法 とはあまり呼びません。
ただの現在形、過去形、一般動詞の文、be動詞の文として習うことが多いです。
しかし、法の視点から見ると、これらは直説法です。
つまり、内容を現実のこととして述べている文です。
直説法はあまりにも基本的なので、かえって見えにくい。
ここが重要です。
仮定法と比べると見えやすい
直説法は、仮定法と比べるとわかりやすくなります。
He is here.
彼はここにいます。
If he were here, we could ask him.
もし彼がここにいたら、彼に聞けるのに。
最初の文、
He is here.
は、彼がここにいることを現実のこととして述べています。
これは直説法です。
一方、
If he were here...
は、実際には彼がここにいない状況で、 「もし彼がここにいたら」と仮定しています。
これは、現実から距離を取っています。
つまり、
直説法:現実のこととして述べる
仮定法:現実から距離を取って述べる
という違いがあります。
命令法とも違う
直説法は、命令法とも違います。
You open the door.
あなたはドアを開けます。
Open the door.
ドアを開けなさい。
最初の文は、あなたがドアを開けるという内容を述べています。
これは直説法です。
一方、
Open the door.
は、ドアを開けるように相手に求めています。
これは命令法です。
つまり、命令法は事実を述べているのではありません。
相手に行動を求めています。
ここでも、
直説法:事実として述べる
命令法:行動を求める
という違いがあります。
直説法は現実性が高い
直説法の特徴は、 現実性が高い形 だということです。
He is sick.
この文では、話し手は彼が病気であることを現実のこととして述べています。
一方、
He may be sick.
になると、少し違います。
これは、
彼は病気かもしれない
という意味です。
助動詞 may によって、内容が可能性として提示されています。
さらに、
If he were sick...
になると、仮定として扱われます。
こうして並べると、直説法の特徴が見えてきます。
| 文 | 見方 | 日本語 |
|---|---|---|
| He is sick. | 事実として述べる | 彼は病気です。 |
| He may be sick. | 可能性として述べる | 彼は病気かもしれません。 |
| If he were sick... | 仮定として述べる | もし彼が病気なら…… |
直説法は、命題をもっとも直接的に現実へ置く形だと言えます。
直説法は断定と同じではない
ここで注意したいのは、 直説法 = 絶対に正しい断定 ではないということです。
He is at home.
この文は直説法です。
しかし、話し手が勘違いしている可能性はあります。
実際には彼が学校にいるかもしれません。
それでも、この文は直説法です。
なぜなら、話し手がその内容を 事実として提示している からです。
つまり、直説法は、
その文が本当に正しいかどうか
の問題ではありません。
そうではなく、
話し手がその内容をどのような態度で出しているか
の問題です。
この点は、モダリティの話ともつながります。
直説法とモダリティ
直説法は、事実として述べる形です。
ただし、直説法の文にも、モダリティが加わることがあります。
He is at home.
これは、かなり直接的に述べています。
He must be at home.
これは、
彼は家にいるに違いない
という強い推量です。
He may be at home.
これは、
彼は家にいるかもしれない
です。
つまり、文の内容は同じように「彼が家にいる」ですが、 助動詞によって話し手の確信度が変わります。
法とモダリティは深く関わります。
直説法は、命題を現実のこととして提示する基本形です。 そこに助動詞が加わることで、可能性・推量・義務などの話し手の態度が加わります。
なぜ直説法は学習で見落とされやすいのか
英語学習で直説法が見落とされやすいのは、直説法があまりにも普通だからです。
学校では、
- 現在形
- 過去形
- 現在進行形
- 現在完了
- 受動態
のように、形ごとに文法を学びます。
しかし、それらの多くは、法の観点から言えば直説法の中で使われています。
He studies English.
He studied English.
He is studying English.
He has studied English.
これらは、時制やアスペクトは違います。
しかし、文の内容を現実のこととして述べているという意味では、 どれも直説法です。
つまり、テンスやアスペクトと、法は別のレイヤーにあります。
ここを分けると、英語文法全体が少し見えやすくなります。
テンス・アスペクト・法を分ける
英語の文を理解するときは、 テンス ・ アスペクト ・ 法 を分けて見ると整理しやすくなります。
He was studying English.
この文は、
- テンス:過去
- アスペクト:進行
- 法:直説法
と見ることができます。
過去のある時点で、彼が英語を勉強している途中だった。 その内容を現実の出来事として述べています。
一方、
If he were studying English...
となると、現実とは距離を取った仮定になります。
ここでは、法のレイヤーが変わっています。
このように、英語の文は一つの文の中に複数の文法情報を持っています。
| 観点 | 見るもの | 例 |
|---|---|---|
| テンス | いつの話か | was |
| アスペクト | 出来事をどう見ているか | studying |
| 法 | 文をどの態度で提示するか | 直説法・仮定法・命令法 |
直説法を理解することは、英語文法の土台を見ることにつながります。
学習者はどう覚えればよいか
学習者向けには、直説法を次のように覚えるとよいです。
直説法は、文の内容を現実のこととして述べる法である。
普通の肯定文や否定文、疑問文の多くは直説法です。
He is a student.
He is not a student.
Is he a student?
これらは、肯定・否定・疑問という違いはあります。
しかし、いずれも現実の事柄について述べたり、問うたりしています。
その意味では、直説法の範囲に入ります。
逆に、
If I were you...
のように、現実とは違う仮定を置く場合には、仮定法が関わってきます。
また、
Be quiet.
のように、相手に行動を求める場合には、命令法が関わってきます。
つまり、直説法は、仮定法や命令法を理解するための基準になります。
まとめ
直説法 とは、文の内容を事実・現実の出来事として述べる法です。
- 直説法は、内容を現実のこととして提示する
- 英語の多くの普通の文は直説法である
- 直説法は、仮定法や命令法と比べると見えやすい
- 直説法は、文が本当に正しいかどうかではなく、話し手がどう提示しているかの問題である
- テンス・アスペクト・法は別のレイヤーとして考えると整理しやすい
- 直説法を理解すると、仮定法や命令法の位置づけも見えやすくなる
英語では、直説法という言葉をあまり意識しないかもしれません。
しかし、直説法は英語の文の基本です。
ふだん使っている多くの文は、現実の出来事として内容を述べています。
He is here.
She lives in Tokyo.
It rained yesterday.
これらはすべて、直説法の文です。
直説法を意識すると、 仮定法は「現実から距離を取る法」、 命令法は「相手に行動を求める法」として見えやすくなります。
つまり、直説法は目立たないけれど、英語の法を理解するための基準になるのです。