塾長ノート

英語の「法」とは何か

文の現実性をどう示すか

英語の文法を勉強していると、 仮定法 という文法項目が出てきます。

If I were you, I would study harder.
もし私があなたなら、もっと一生懸命勉強するでしょう。

多くの学習者にとって、仮定法はかなり難しい単元です。

ただ、そもそも 仮定法の「法」とは何なのか というところまで整理されることは、意外と多くありません。

英語学習では、

仮定法 = if を使う特殊な文法

のように扱われがちです。

しかし、本来「仮定法」は、 という大きな文法カテゴリーの一部です。

英語には、

  • 直説法
  • 命令法
  • 仮定法

のような法の区別があります。

今回は、英語の とは何かを、直説法・命令法・仮定法を入口に整理していきます。

法とは何か

文法でいう とは、ざっくり言えば、 文の内容をどのような態度で提示するか に関わる仕組みです。

たとえば、次の文を見てください。

He is here.
彼はここにいます。

この文は、彼がここにいることを、事実として述べています。

一方で、

If he were here, we could ask him.
もし彼がここにいたら、彼に聞けるのに。

これは、彼が実際にここにいると述べているわけではありません。

現実とは距離を置いて、 もし彼がここにいたら という仮定として述べています。

また、

Be quiet.
静かにしなさい。

は、事実を述べている文ではありません。

相手に行動を求めています。

つまり、同じ英語の文でも、

事実として述べる
仮定として述べる
命令として述べる

というように、文の出し方が違います。

この文の出し方、つまり文の内容に対する話し手の態度を表す文法カテゴリーが です。

直説法は事実として述べる

まず、 直説法 から見てみます。

直説法は、文の内容を事実・現実の出来事として述べる形です。

He is a student.
彼は学生です。
She lives in Tokyo.
彼女は東京に住んでいます。
It rained yesterday.
昨日は雨が降りました。

これらは、現実のこととして述べています。

もちろん、話し手が間違っている可能性はあります。 しかし、文の形としては、内容を事実として提示しています。

英語の多くの文は、この直説法です。

そのため、学習者は普段あまり「これは直説法だ」と意識しません。

しかし、直説法を意識しておくと、仮定法や命令法との違いが見えやすくなります。

He is here.
彼はここにいる。

これは、現実として述べている。

だから直説法です。

命令法は相手に行動を求める

次に、 命令法 です。

命令法は、文の内容を事実として述べるのではなく、 相手に行動を求める形です。

Open the door.
ドアを開けなさい。
Come here.
ここに来なさい。
Be careful.
気をつけなさい。

これらは、何かが現実に起きていることを述べている文ではありません。

話し手が、聞き手に行動を求めています。

たとえば、

Open the door.

は、 あなたがドアを開けている という事実を述べているわけではありません。

まだ開いていないドアを、これから開けるように求めています。

つまり、命令法は、

事実の描写ではなく、行動への働きかけ

です。

仮定法は現実から距離を取る

次に、 仮定法 を見ます。

仮定法は、現実そのものを述べるのではなく、 現実から距離を取った仮定や想像を表すときに使われます。

If I were you, I would apologize.
もし私があなたなら、謝ります。

この文では、実際には話し手は「あなた」ではありません。

それでも、

もし私があなたなら

と仮定しています。

ここでは、現実とは違う世界を想定しています。

だから、 If I was you ではなく、伝統的には If I were you が使われます。

この were は、単純な過去を表しているのではありません。

現実から距離を取る働きをしています。

つまり、仮定法は、

現実ではないこと
実現していないこと
話し手が距離を置いて想像していること

を表すときに使われます。

法は「現実性」の違いを示す

ここまでをまとめると、 法は 文の現実性をどう示すか と関係しています。

文の出し方
直説法 事実として述べる He is here.
命令法 相手に行動を求める Be quiet.
仮定法 現実から距離を取って述べる If he were here...

直説法は、文の内容を現実のこととして提示します。

命令法は、相手に行動を求めます。

仮定法は、現実とは違う、あるいは現実から距離を取った内容として提示します。

このように見ると、仮定法は「if の特殊文法」ではなく、 法という大きな仕組みの中に置くことができます。

英語では法が見えにくい

ただし、英語では法が少し見えにくいです。

なぜなら、現代英語では動詞の形の変化がかなり少なくなっているからです。

たとえば、直説法と仮定法の違いがはっきり形に出る場面は限られています。

If I were you...

のような例では、仮定法らしさが見えます。

しかし、多くの場合、英語の法は、動詞の形だけではなく、

  • 助動詞
  • 過去形
  • 語順
  • if 構文
  • 命令文

などに分散して現れます。

そのため、英語学習では、 という大きなカテゴリーが見えにくくなりがちです。

法助動詞と法

前回の記事では、英語のモダリティと法助動詞について扱いました。

can, may, must, should, would などの助動詞は、文の内容に対する話し手の態度を表します。

He may come.
彼は来るかもしれない。
He must be tired.
彼は疲れているに違いない。
You should rest.
休んだほうがいい。

これらは、文の内容をただ述べているのではありません。

話し手が、その内容を可能性として見たり、義務として見たり、強い推量として見たりしています。

つまり、法助動詞は、英語の中で 法やモダリティを担う重要な表現 です。

英語では、法が動詞の形としてはっきり見えにくい分、 助動詞が大きな役割を担っています。

仮定法だけが「法」ではない

英語学習では、 仮定法 だけが「法」という名前で大きく扱われがちです。

そのため、

法 = 仮定法

のように見えてしまうことがあります。

しかし、本来はそうではありません。

仮定法は、法の一つです。

そのほかに、直説法や命令法もあります。

また、英語では法助動詞によって、可能性・義務・推量・意志・丁寧さなどを表します。

つまり、英語の「法」を考えるには、

  • 直説法
  • 命令法
  • 仮定法
  • 法助動詞
  • モダリティ

をつなげて見る必要があります。

フランス語では法が見えやすい

英語と比べると、フランス語では が文法項目として見えやすいです。

たとえば、フランス語では、

  • 直説法 indicatif
  • 接続法 subjonctif
  • 条件法 conditionnel
  • 命令法 impératif

のように、法がはっきり文法カテゴリーとして扱われます。

一方、英語では、フランス語ほど動詞の形として法が見えやすいわけではありません。

そのため、英語では「法」という視点が学習者に見えにくくなります。

しかし、英語にも法の感覚はあります。

ただ、それが、

助動詞
過去形
if 構文
命令文

などに分散しているだけです。

この点は、フランス語との比較記事であらためて扱いたいところです。

学習者はどう覚えればよいか

学習者向けには、まず次のように整理するとよいです。

法とは、文の内容をどのような態度で提示するかを表す仕組みである。

そして、英語では大きく次のように見ます。

  • 直説法:事実として述べる
  • 命令法:相手に行動を求める
  • 仮定法:現実から距離を取って述べる
  • 法助動詞:可能性・義務・推量・意志などを加える

こうして整理すると、 仮定法は孤立した特殊文法ではなくなります。

直説法・命令法・仮定法・法助動詞という大きな流れの中で見ることができます。

まとめ

英語の は、文の内容をどのような態度で提示するかに関わる文法カテゴリーです。

  • 直説法 は、文の内容を事実として述べる
  • 命令法 は、相手に行動を求める
  • 仮定法 は、現実から距離を取って述べる
  • 英語では、法が動詞の形としてはっきり見えにくいことがある
  • そのため、助動詞・過去形・if構文・語順などに法の働きが分散している
  • 法助動詞 は、英語のモダリティを担う重要な表現である
  • 仮定法だけでなく、直説法や命令法も含めて「法」として見ると理解しやすい

英語学習では、仮定法だけが特別な文法項目として扱われがちです。

しかし、本来は、

事実として述べるのか
仮定として述べるのか
命令として出すのか
可能性や義務として示すのか

という大きな視点が必要です。

それが、 の視点です。

この視点を持つと、仮定法も、命令文も、法助動詞も、ばらばらの文法事項ではなく、 話し手が文をどのような態度で提示しているのかという一つの流れの中で見えてきます。

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