前回の記事では、日本語の テンス と アスペクト について考えました。
ざっくり言えば、
テンス:いつの話か
アスペクト:出来事をどう捉えるか
という違いです。
今回は、この考え方を英語に移して考えます。
英語を勉強していると、 現在形、 過去形、 現在完了、 進行形 など、いろいろな形が出てきます。
これらを全部「時制」として丸暗記しようとすると、かなり混乱します。
なぜなら、英語では テンス と アスペクト が組み合わさって意味を作っているからです。
今回は、英語の過去形・現在完了・進行形を例にしながら、 いつの話か と どう見ているか を分けて整理していきます。
テンスは「いつの話か」
まず、テンスは いつの話か を表します。
I eat breakfast.
私は朝食を食べます。
I ate breakfast.
私は朝食を食べました。
eat と ate では、時間の感じが違います。
ate は過去形なので、発話時より前の出来事を表します。
このように、
現在の話なのか
過去の話なのか
を示すのがテンスです。
ただし、英語の文法で大切なのは、 テンスだけでは意味が決まらない という点です。
英語には、完了形や進行形のように、 出来事の見方を表す形があります。
それがアスペクトです。
アスペクトは「出来事をどう見るか」
アスペクトは、出来事をどう捉えるかに関わります。
たとえば、次の2文を比べてみます。
I eat breakfast.
私は朝食を食べます。
I am eating breakfast.
私は朝食を食べているところです。
どちらも現在の話です。
しかし、 I eat breakfast は、習慣や一般的な事実としての「食べる」を表しやすいです。
一方、 I am eating breakfast は、今まさに食べている最中であることを表します。
つまり、 am eating は、出来事を 進行中 のものとして見ています。
これがアスペクトです。
テンスが「いつの話か」なら、 アスペクトは「その出来事をどんな状態として見ているか」です。
進行形は「途中を見ている」
英語の進行形は、 be + 動詞の ing 形 で作ります。
I am studying English.
私は英語を勉強しています。
She is reading a book.
彼女は本を読んでいます。
進行形では、出来事の途中を見ています。
勉強するという動作の途中
本を読むという動作の途中
を切り取っているわけです。
そのため、進行形は、 その動作が始まっていて、まだ終わっていない感じを表します。
ここで大事なのは、進行形は単に 現在 を表す形ではないということです。
進行形は、現在だけでなく過去にも使えます。
I was studying English.
私は英語を勉強していました。
She was reading a book.
彼女は本を読んでいました。
ここでは、過去のある時点で、その動作の途中だったことを表しています。
つまり、進行形はテンスそのものではありません。
進行形は、 出来事の途中を見るアスペクト です。
現在進行形と過去進行形
進行形は、テンスと組み合わせて使われます。
| 形 | テンス | アスペクト | 意味 |
|---|---|---|---|
| I am studying. | 現在 | 進行 | 今、勉強している途中 |
| I was studying. | 過去 | 進行 | 過去のある時点で、勉強している途中だった |
このように見ると、 am / was がテンスを表し、 studying が進行の見方を作っていることがわかります。
つまり、
was studying = 過去 + 進行
です。
これをただ「過去進行形」と丸暗記するだけでなく、 過去の時点で、出来事の途中を見ている と考えると、意味がつかみやすくなります。
完了形は「現在とのつながり」を見る
次に、英語の 完了形 を見ます。
代表的なのが、現在完了です。
I have eaten lunch.
私は昼食を食べました。/昼食はもう食べています。
この文は、過去に昼食を食べたことを表しています。
しかし、ただの過去形とは違います。
I ate lunch.
私は昼食を食べました。
I have eaten lunch.
私は昼食を食べ終えています。
I ate lunch は、過去の出来事として「食べた」と述べています。
一方、 I have eaten lunch は、昼食を食べたという過去の出来事を、 現在の状態とつなげています。
つまり、
食べた
↓
だから今、昼食は済んでいる
という感じです。
ここでも、ただ「いつの話か」だけではありません。
出来事を、現在とのつながりの中で見ている。
これが完了のアスペクトです。
過去形と現在完了の違い
過去形と現在完了の違いは、英語学習でとても重要です。
I lost my key.
私は鍵をなくしました。
I have lost my key.
鍵をなくしてしまいました。
どちらも、鍵をなくしたことを表しています。
しかし、 I lost my key は、過去の出来事として述べています。
一方、 I have lost my key は、現在とのつながりが強くなります。
鍵をなくした。
そして今も困っている。
今、鍵がない状態だ。
という感じです。
つまり、現在完了は、 過去の出来事を現在に引きつけて見ています。
だから「現在」完了なのです。
現在完了は「過去形」ではない
現在完了は、日本語では「〜したことがある」「〜してしまった」「〜している」などと訳されます。
そのため、過去形と混同しやすいです。
I visited Kyoto.
私は京都を訪れました。
I have visited Kyoto.
私は京都を訪れたことがあります。
I visited Kyoto は、過去のある時点で京都を訪れたという出来事を表します。
一方、 I have visited Kyoto は、その経験が現在の自分にあることを表しています。
つまり、
京都を訪れた経験が、今の自分の中にある
という見方です。
ここでも、ただの過去ではなく、 過去の出来事と現在とのつながり が大事です。
完了形もテンスと組み合わさる
完了形も、テンスと組み合わせて使われます。
| 形 | テンス | アスペクト | 意味 |
|---|---|---|---|
| I have eaten. | 現在 | 完了 | 今につながる完了・経験 |
| I had eaten. | 過去 | 完了 | 過去のある時点より前に完了していた |
I have eaten は、現在を基準にして、食べたことが今に関係している形です。
一方、 I had eaten は、過去のある時点を基準にして、それより前に食べ終わっていたことを表します。
I had eaten dinner when he called me.
彼が電話してきたとき、私は夕食を食べ終えていました。
ここでは、
夕食を食べ終えた
↓
そのあと、彼が電話してきた
という順番です。
つまり、 had eaten は、
過去 + 完了
です。
時制の一致ともつながる
前回の記事では、 相対テンス と 絶対テンス を扱いました。
私は、彼が病気だと思った。
I thought that he was sick.
日本語では「病気だ」なのに、英語では was sick になります。
ここでも、テンスと基準時の考え方が必要になります。
英語では、主文の thought が過去なので、従属節も was になります。
しかし、その was は、必ずしも日本語の「病気だった」と同じではありません。
そして、
I thought that he had been sick.
となると、 思った時点より前に病気だった という意味になります。
ここでは、 過去完了 が、過去の基準時よりさらに前を表しています。
このように、英語の時制を理解するには、 テンスだけでなく、完了というアスペクトも見る必要があります。
英語の形は「テンス + アスペクト」で見る
英語の形は、 テンス と アスペクト の組み合わせとして見ると整理しやすくなります。
| 形 | テンス | アスペクト | 見方 |
|---|---|---|---|
| I study. | 現在 | 単純 | 習慣・一般的事実 |
| I studied. | 過去 | 単純 | 過去の出来事 |
| I am studying. | 現在 | 進行 | 今、途中 |
| I was studying. | 過去 | 進行 | 過去の時点で途中 |
| I have studied. | 現在 | 完了 | 今につながる経験・完了 |
| I had studied. | 過去 | 完了 | 過去の基準時より前に完了 |
こうして見ると、英語の形はバラバラではありません。
まず、いつの話かを見る。 それがテンスです。
次に、その出来事をどう見ているかを見る。 それがアスペクトです。
この2つを分けると、英語の時制はかなり整理しやすくなります。
単純形もアスペクトの一つとして見る
進行形や完了形だけがアスペクトではありません。
単純形 も、出来事をどう見るかという意味では、アスペクトの一つとして考えることができます。
I read books.
私は本を読みます。
この文は、今まさに読んでいる途中というより、 習慣や一般的な事実を表します。
I am reading a book.
私は本を読んでいます。
こちらは、今その動作の途中です。
つまり、
I read books.
→ 習慣・一般的事実として見る
I am reading a book.
→ 今進行中の出来事として見る
という違いがあります。
同じ「現在」でも、見方が違うのです。
学習者はどう覚えればよいか
学習者向けには、まず次のように整理するとよいです。
テンス:いつの話か
アスペクト:どう見ているか
そして、英語の代表的な形を次のように見ると理解しやすくなります。
- 過去形:過去の出来事として見る
- 進行形:出来事の途中を見る
- 現在完了:過去の出来事と現在のつながりを見る
- 過去完了:過去の基準時より前の完了を見る
特に大切なのは、 現在完了はただの過去形ではない ということです。
I ate lunch.
昼食を食べた。
I have eaten lunch.
昼食はもう食べている。
過去形は、過去の出来事として述べます。
現在完了は、過去の出来事を現在と結びつけて見ます。
ここを分けるだけでも、英語の時制はかなり見えやすくなります。
日本語訳だけで判断しない
英語のテンスとアスペクトを学ぶとき、日本語訳だけで判断すると混乱します。
I ate lunch.
昼食を食べた。
I have eaten lunch.
昼食を食べた。
日本語では、どちらも「食べた」と訳せることがあります。
しかし、英語では見ているものが違います。
I ate lunch.
→ 過去の出来事
I have eaten lunch.
→ 現在とつながる完了
つまり、日本語訳が同じでも、英語の文法的な見方は違います。
ここを理解するには、テンスとアスペクトを分けて考える必要があります。
まとめ
英語の時制を理解するには、 テンス と アスペクト を分けて考えることが大切です。
- テンス は、いつの話かを表す
- アスペクト は、出来事をどう捉えるかを表す
- 進行形 は、出来事の途中を見る
- 現在完了 は、過去の出来事と現在のつながりを見る
- 過去完了 は、過去の基準時より前に完了していたことを表す
- 英語の過去形と日本語の「〜た」は、いつも単純に対応するわけではない
- 日本語訳が同じでも、英語では見ている時間関係や出来事の捉え方が違うことがある
英語の文法を学ぶとき、 形の名前だけを覚えると、どうしても混乱しやすくなります。
しかし、
いつの話か
どう見ているか
を分けて考えると、現在完了や進行形、過去完了の意味がかなり整理しやすくなります。
英語の時制は、単に過去・現在・未来を並べるだけではありません。
出来事を途中として見るのか。 完了したものとして見るのか。 現在とつながるものとして見るのか。
そこまで見ることで、英語の時間表現はかなり立体的に見えてきます。