home は、多くの人が「家」と覚える単語です。
This is my home.
ここが私の家です。
この home は名詞です。 「家」「住まい」「帰る場所」を表しています。
ところが、英語では次のようにも言います。
I went home.
私は家へ帰りました。
Come home early.
早く帰ってきなさい。
ここで疑問が出ます。
「家へ」なら、なぜ go to home ではないのか。
現代英語の文法では、go home の home は副詞として説明されます。 home だけで「家へ」という方向を表すため、普通は to をつけません。
ただ、この記事では「home は副詞だから to がいらないです」で終わらせません。
もう少し古い英語までさかのぼると、home が副詞として使われる理由が見えてきます。 その鍵になるのが、古英語の 格変化 と 副詞的対格 です。
現代英語だけを見ると home は例外に見える
現代英語では、場所へ向かうときに to を使うことが多いです。
go to school
学校へ行く
go to the station
駅へ行く
go to the park
公園へ行く
そのため、「家へ行く」も、
go to home
になりそうに見えます。
しかし、実際には普通、
go home
と言います。
これは、home が普通の名詞としてではなく、 方向を表す副詞として働いているからです。
ただ、ここでさらに疑問が出ます。
では、なぜ home は副詞として働けるのか。
この問いに答えるには、古英語の仕組みを少し見る必要があります。
古英語には格変化があった
現代英語では、名詞の形はあまり大きく変わりません。
a house
the house
to the house
at the house
このように、名詞 house 自体はほとんど変化せず、 前置詞や語順によって意味を表します。
しかし、古英語では名詞や形容詞などが、文の中での役割に応じて形を変えていました。 これを 格変化 と言います。
古英語には、主格・対格・属格・与格などの格がありました。
| 格 | ざっくりした働き |
|---|---|
| 主格 | 主語になる |
| 対格 | 目的語・移動の到達点などを表す |
| 属格 | 所有・所属などを表す |
| 与格 | 場所・手段・間接目的語などを表す |
もちろん、実際の古英語文法はもっと複雑です。 ただ、ここで大事なのは、
古英語では、名詞の形が文中の役割を表していた
という点です。
現代英語では、前置詞 to や at で表すような意味の一部を、 古英語では名詞の格変化そのものが担うことがありました。
主格以外の名詞が副詞のように働くことがあった
古英語では、名詞が主語として使われるだけでなく、 主格以外の形になって、文全体を修飾するように働くことがありました。
たとえば、時間・距離・方向・範囲などを表す名詞が、 副詞のように使われることがあります。
現代英語にも、その名残のような表現があります。
I slept all night.
私は一晩中眠りました。
He walked ten miles.
彼は10マイル歩きました。
all night や ten miles は名詞を含む表現ですが、 文の中では「いつ」「どれくらい」という副詞的な働きをしています。
このように、名詞が副詞のように働くことは、英語の中に古くからある発想です。
その中でも、対格が時間・距離・方向などを表して副詞的に働く用法は、 副詞的対格 と呼ばれます。
home の副詞用法も、この副詞的対格の名残として説明されることがあります。
home のもとになった古英語 hām
home のもとになった古英語の語は、hām です。
この hām は、「家」「住む場所」「定住地」「村」「故郷」のような意味を持っていました。
現代英語の home も、単なる建物としての「家」だけでなく、 「帰る場所」「自分の居場所」「故郷」のような響きを持っています。
この感覚は、古英語の hām からつながっていると考えるとわかりやすいです。
hām
家・住む場所・定住地・故郷
そして重要なのは、この hām が古英語の段階で、 名詞としてだけでなく、副詞的にも使われていたことです。
つまり、hām は「家」という場所を表すだけでなく、 移動動詞と一緒に「家へ」「故郷へ」という方向を表すことができました。
go home の home は「家へ」を表す古い用法の名残
現代英語の go home を見ると、 home は前置詞なしで「家へ」を表しています。
I go home.
私は家へ帰ります。
これは、現代英語の感覚だけで見ると少し不思議です。
しかし古英語の hām には、移動の方向を表す副詞的な用法がありました。 そのため、go home の home は、
to home の to が省略されたもの
というより、
古くから「家へ」を表せた hām の用法が残ったもの
と見るほうが自然です。
つまり、
go home = go + 「家へ」を表す home
です。
home 自体に方向の意味が入っているので、普通は to をつけません。
副詞的対格としての home
ここで、今回の記事の中心になる 副詞的対格 という考え方を整理します。
対格は、よく「目的語の格」として説明されます。 しかし、古英語では対格が直接目的語だけでなく、 移動の到達点・範囲・時間などを表すこともありました。
そのような対格の名詞が、副詞のように働く場合があります。
どこへ
どれくらい
いつまで
どの範囲を
のような意味を、名詞の形が担うわけです。
home の副詞用法は、この副詞的対格の一例として説明されることがあります。
つまり、go home の home は、 現代英語では副詞として扱われますが、歴史的には、
「家へ」を表す対格形が副詞のように働いたもの
と見ることができます。
ここで注意したいのは、語源の話は単純化しすぎないことです。
古英語の hām については、形の上で対格と与格の区別が常にはっきり見えない場合もあります。 そのため、すべてを単純に「これは対格です」と言い切るのは慎重であるべきです。
ただし、移動を表す動詞のあとで「家へ」という方向を表す用法は、 副詞的対格として説明すると非常に理解しやすくなります。
at home はなぜ at があるのか
ここで、at home との違いも少しだけ見ておきます。
I went home.
私は家へ帰りました。
I was at home.
私は家にいました。
go home は移動です。 home は「家へ」という方向・到達点を表しています。
一方、at home は所在です。 移動先ではなく、「家という場所にいる」ことを明示しています。
つまり、
| 表現 | 中心 | 意味 |
|---|---|---|
| go home | 方向・到達点 | 家へ帰る |
| come home | 方向・到達点 | 家へ帰ってくる |
| at home | 場所・所在 | 家にいる/在宅している |
と整理できます。
go home の home は「家へ」という方向の名残。 at home は「家という場所に」という所在の明示。
ここを分けると、home の副詞用法と at home の前置詞句が同時に理解しやすくなります。
「to が省略された」と考えすぎない
学習者向けの説明では、go home を、
go to home の to が省略されたもの
のように説明したくなることがあります。
しかし、これは少し注意が必要です。
現代英語の感覚で見ると、「家へ」なのに to がないため、 たしかに to が省略されたように見えます。
しかし歴史的に見ると、home には古くから「家へ」を表す副詞的な用法がありました。
そのため、go home は、
本来あるはずの to が抜けた
というより、
home 自体が方向を表す語として残っている
と見るほうがよいです。
つまり、
go home = go + homeward
に近い感覚です。
実際、英語には homeward や homewards という語もあり、 「家の方へ」「帰路へ」という方向を表します。
homeward
家の方へ
homewards
家の方へ
go home の home も、こうした「家へ」の方向感覚を持つ語として捉えると自然です。
home は here / there と似た働きをする
home の副詞用法は、here や there と比べるとわかりやすいです。
Come here.
ここへ来なさい。
Go there.
そこへ行きなさい。
Go home.
家へ帰りなさい。
here や there は、前置詞なしで方向や場所を表します。
home も、これに近い働きをします。
もちろん、home は名詞としても使えるので、here や there と完全に同じではありません。 しかし、go home の home は、文の中では場所副詞のように働いています。
here:ここへ/ここで
there:そこへ/そこで
home:家へ/家で
と並べると、go home に to がいらない理由が見えやすくなります。
ただし今回の記事の中心は、単なる「副詞だから」ではありません。 その背後には、古英語の hām と格変化の名残があるという点です。
home は「建物」よりも「帰る場所」
home の副詞用法を考えるときには、 home が単なる建物ではなく、帰る場所を表す語であることも大切です。
house は、建物としての家を表します。
a big house
大きな家
一方、home は、住む場所、帰る場所、生活の中心、故郷のような意味を持ちます。
I want to go home.
家に帰りたい。
この文で大事なのは、建物としての家ではありません。
自分が戻るべき場所。 自分のいるべき場所。 自分の生活がある場所。
そういう意味での home です。
古英語 hām も、単なる建物というより、 住む場所・定住地・村・故郷のような広がりを持っていました。
だから home は、単なる名詞としての「家」だけでなく、 「家へ」「故郷へ」という方向を表す語としても使われやすかったと考えられます。
現代英語に残った古い文法の化石
現代英語は、古英語に比べると格変化を大きく失いました。
今の英語では、名詞の形を変えるよりも、語順や前置詞で文の関係を表すことが多いです。
to school
at school
from school
のように、前置詞で方向・場所・出発点を示します。
しかし、古い用法が完全に消えたわけではありません。
go home の home のように、 古英語の格用法の名残として説明できる表現が、現代英語にも残っています。
これは、いわば文法の化石のようなものです。
現代英語の中に、古い英語の仕組みが一部だけ残っている。
そう考えると、go home は単なる例外ではなく、 英語史の名残として見ることができます。
go to my home はなぜ言えることがあるのか
ここまで読むと、
では、go to my home は絶対に間違いなのか
という疑問も出るかもしれません。
結論から言うと、go to my home のような形は文法的には可能です。
Please come to my home.
私の家に来てください。
この場合、my home は名詞句です。 「私の家」という場所を名詞として扱っているので、前置詞 to を取ることができます。
一方で、
go home
の home は副詞として働いています。
つまり、
| 表現 | home の働き | 意味 |
|---|---|---|
| go home | 副詞 | 家へ帰る |
| go to my home | 名詞句の一部 | 私の家へ行く |
です。
ただし、日常的には「家に帰る」は go home が圧倒的に自然です。 go to my home は、少し説明的、あるいは文脈によっては不自然に聞こえることもあります。
学習者はどう覚えればよいか
学習者向けには、まず次のように覚えるのが実用的です。
go home
家へ帰る
come home
家へ帰ってくる
get home
家に着く
これらは、to をつけずにそのまま覚えます。
そのうえで、少し深く理解するなら、
home は古くから「家へ」を表す副詞的な用法を持っていた
と考えるとよいです。
そして、さらに英語史的に見るなら、
古英語の hām の副詞的対格の名残として説明できる
と整理できます。
つまり、覚える順番としては、
- まず go home を丸ごと覚える
- home は「家へ」を表す副詞だと理解する
- 余裕があれば、古英語の副詞的対格の名残として見る
という流れがよいです。
英作文ではどう使えばよいか
英作文では、「家へ帰る」は基本的に go home を使います。
I went home after school.
私は放課後、家へ帰りました。
I want to go home early today.
今日は早く家に帰りたいです。
go to home とは普通書きません。
「家に着く」なら、
I got home at seven.
私は7時に家に着きました。
と言えます。
「家にいる」なら、所在なので at home が使えます。
I was at home yesterday.
私は昨日、家にいました。
ここでは移動ではなく場所を明示したいので、at home になります。
つまり、
go home:家へ
at home:家で・家に
と分けておくと、英作文でも使いやすくなります。
読解では home を「名詞」と決めつけない
英文を読むときは、home を見た瞬間に「家という名詞」と決めつけないことが大切です。
He finally returned home.
彼はついに家へ戻りました。
この home は、returned を修飾して「家へ」を表しています。
She stayed at home.
彼女は家にいました。
この home は、at home という前置詞句の中で場所を表しています。
This is my home.
ここが私の家です。
この home は名詞です。
同じ home でも、文の中での働きは違います。
ここを見ると、英語の品詞は「単語ごとに固定されている」というより、 文の中での働きによって決まる面があることもわかります。
まとめ
home は「家」と訳されることが多い単語です。 しかし、go home や come home では副詞として働きます。
- go home の home は「家へ」を表す副詞
- go to home とは普通言わない
- home のもとになった古英語 hām は「家・住む場所・定住地・故郷」などを表した
- 古英語では名詞が格変化し、主格以外の形が副詞のように働くことがあった
- home の副詞用法は、移動の到達点を表す 副詞的対格 の名残として説明できる
- go home は方向、at home は所在を表す
- home は単なる建物ではなく、「帰る場所」「自分の場所」という感覚を持つ
home が副詞として使われるのは、現代英語だけを見ると少し例外的に見えます。
しかし、古英語までさかのぼると、 home には古くから「家へ」という方向を表す用法があったことが見えてきます。
つまり、go home の home は、to が省略されたというより、
「家へ」を表す古い副詞的用法が現代英語に残ったもの
と考えるとわかりやすいです。
英単語には、現代英語のルールだけでは説明しにくいものがあります。 その背景に、古い英語の文法が残っていることがあります。
home は、そのよい例です。
「家」という身近な単語の中に、古英語の格変化と副詞的対格の名残が残っている。 そう考えると、go home という何気ない表現も、少し違って見えてきます。