塾長ノート

Would you 〜 はなぜ丁寧なのか

仮定法がつくる距離感

英語で丁寧にお願いするとき、

Would you 〜?

という形を使う。

たとえば、

Would you open the window?
窓を開けていただけますか。

のような文である。

学校では、

Will you 〜? より Would you 〜? の方が丁寧

と習うことが多い。

もちろん、それは正しい。

しかし、そこで疑問が出てくる。

なぜ would にすると丁寧になるのか。

would は will の過去形だと習う。

では、過去形にすると、なぜ丁寧になるのだろうか。

今回は、 Would you 〜? が丁寧に聞こえる理由を、過去形と仮定法の感覚から整理してみたい。

Will you 〜? はかなり直接的である

まず、 Will you 〜? から考える。

たとえば、

Will you open the window?

は、日本語にすれば「窓を開けてくれますか」のような意味である。

文法的には問題ない。

ただし、場面によっては少し直接的に響く。

なぜなら、 will は、相手の意思をかなりまっすぐに聞いているからである。

あなたはそれをするつもりがありますか。

という感じがある。

もちろん、親しい関係や日常的な場面では普通に使える。

しかし、相手に負担をかけるお願いをするときや、少し丁寧に言いたいときには、もう少し距離を取った表現にしたくなる。

そこで出てくるのが、 would である。

would は will の過去形である

文法的には、 wouldwill の過去形である。

will → would

これは基本である。

ただし、ここでいう「過去形」は、いつも時間としての過去を表すわけではない。

英語では、過去形が

現実からの距離

を表すことがある。

これが、仮定法と深く関係している。

たとえば、

If I were rich, I would buy a big house.

という文がある。

これは、今お金持ちではない人が、

もしお金持ちだったら、大きな家を買うのに

と言っている文である。

ここで werewould は、単純な過去を表しているわけではない。

現実とは違う仮定の世界を表している。

つまり、過去形によって、現実から少し距離を取っているのである。

過去形は「距離」を作る

英語の過去形には、大きく分けて2つの働きがある。

1つは、時間としての過去である。

I lived in Tokyo.
私は東京に住んでいました。

これは普通の過去である。

しかし、もう1つ、心理的・現実的な距離を表す使い方がある。

If I had more time, I would study French.
もっと時間があれば、フランス語を勉強するのに。

これは、単に過去の話をしているわけではない。

現実とは少し離れた仮定の話をしている。

このように、過去形は「今ここ」から距離を取ることがある。

そして、この距離感が、丁寧さにもつながる。

Would you 〜? はお願いを直接ぶつけない

では、 Would you open the window? に戻る。

この文は、直訳すれば、

窓を開ける意思がおありでしょうか。

のような感じである。

実際の日本語としては少し不自然だが、感覚としては、 Will you open the window? よりも一歩引いている。

相手に対して、

開けてくれますよね?

と直接迫るのではなく、

もしよろしければ、開けていただけますか。

というように、相手の判断の余地を残している。

これが丁寧さにつながる。

丁寧さとは、単に長い表現を使うことではない。

相手に対する圧を弱めることである。

would は、その圧を弱めるために働いている。

Can you と Could you の違いも同じである

同じことは、 cancould にも言える。

Can you help me?
手伝ってくれる?
Could you help me?
手伝っていただけますか。

couldcan の過去形である。

しかし、 Could you help me? は、過去の能力を聞いているわけではない。

今、手伝ってもらえるかを丁寧に聞いている。

ここでも、過去形が「距離」を作っている。

Can you 〜? よりも Could you 〜? の方が、直接性が弱まり、丁寧に聞こえる。

つまり、

will → would
can → could

のように、過去形にすることで、相手への依頼を少しやわらげているのである。

丁寧さは「遠回しさ」と関係している

英語に限らず、丁寧な表現は遠回しになることが多い。

日本語でも、

これをしてください。

より、

こちらをお願いできますでしょうか。

の方が丁寧に聞こえる。

なぜなら、相手に直接命令していないからである。

英語の Would you 〜? も同じである。

現実の依頼を、少し仮定の世界にずらしている。

その結果、お願いが直接ぶつからなくなる。

だから丁寧に聞こえる。

Would you like 〜? も同じ発想で見る

丁寧表現として、

Would you like some tea?

という文もよく出てくる。

これは、

お茶はいかがですか。

という意味である。

Do you want some tea? と言うこともできる。

しかし、これはかなり直接的である。

want は「欲しい」という欲求をまっすぐ聞く感じがある。

一方、 Would you like 〜? は、相手の希望を丁寧にたずねる表現である。

ここでも、 would が距離を作っている。

相手の欲求に直接踏み込まず、少しやわらかく聞いているのである。

Would you 〜? は万能ではない

ただし、 Would you 〜? を使えば何でも丁寧になるわけではない。

内容そのものが失礼なら、文法だけ丁寧にしても失礼である。

たとえば、相手に大きな負担をかけるお願いなら、 Would you 〜? だけでは足りないこともある。

その場合は、

Would you mind 〜?
I was wondering if you could 〜.

のように、さらに遠回しな言い方をすることもある。

丁寧さは、単語1つで決まるものではない。

相手との関係、場面、お願いの重さによって変わる。

ただ、その基本にあるのは、

直接性を弱める

という考え方である。

過去形は「昔の話」だけではない

英語を学ぶとき、 過去形=過去の話 と考えがちである。

もちろん、それは基本として正しい。

しかし、英語の過去形には、

時間的な過去
現実からの距離
心理的な距離

のような働きがある。

仮定法で過去形を使うのも、丁寧表現で wouldcould を使うのも、この「距離」と関係している。

つまり、 Would you 〜? が丁寧なのは、

would が過去形だから

というだけでは少し足りない。

より正確には、

過去形によって現実の依頼から距離を取り、直接性を弱めているから

丁寧に聞こえるのである。

まとめ

Would you 〜? は、 Will you 〜? より丁寧な依頼表現である。

その理由は、 wouldwill の過去形であり、英語の過去形が現実からの距離を表すことがあるからである。

Will you 〜? は、相手の意思をかなり直接的に聞く表現である。

一方、 Would you 〜? は、そこから一歩距離を取っている。

そのため、お願いが相手に直接ぶつかりにくくなる。

これが丁寧さにつながる。

同じことは、 Can you 〜?Could you 〜? の違いにも見られる。

過去形は、単に昔のことを表すだけではない。

現実から距離を取ることがある。

その距離感が、仮定法や丁寧表現の土台になっている。

だから、 Would you 〜? は丁寧なのである。

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