数学には、計算そのものは簡単なのに、結果が妙に不思議なものがある。
その代表例の一つが、
6174
である。
4桁の数を用意する。
その数字を大きい順に並べた数と、小さい順に並べた数を作る。
そして、大きい数から小さい数を引く。
これを何度か繰り返すと、多くの場合、最終的に \(6174\) にたどり着く。
この \(6174\) は、カプレカ定数と呼ばれる。
今回は、この不思議な数 \(6174\) について見ていきたい。
まずは実際にやってみる
たとえば、 \(3524\) という4桁の数から始めてみる。
まず、数字を大きい順に並べる。
\[ 5432 \]次に、小さい順に並べる。
\[ 2345 \]そして、大きい数から小さい数を引く。
1回目
\[ 5432-2345=3087 \]次に、出てきた \(3087\) で同じことをする。
大きい順に並べると、
\[ 8730 \]小さい順に並べると、
\[ 0378 \]である。
ここで、先頭に0が来ても、4桁として扱う。
2回目
\[ 8730-0378=8352 \]さらに同じことをする。
3回目
\[ 8532-2358=6174 \]ここで、6174が出てきた。
では、さらに同じ操作を続けるとどうなるか。
6174の数字を大きい順に並べると、
\[ 7641 \]小さい順に並べると、
\[ 1467 \]である。
6174は自分に戻る
\[ 7641-1467=6174 \]つまり、6174まで来ると、同じ操作をしてもまた6174に戻る。
ここが、この数の面白いところである。
6174に吸い寄せられる
別の数でも試してみる。
たとえば、 \(9831\) から始める。
9831から始める
\[ 9831-1389=8442 \] \[ 8442-2448=5994 \] \[ 9954-4599=5355 \] \[ 5553-3555=1998 \] \[ 9981-1899=8082 \] \[ 8820-0288=8532 \] \[ 8532-2358=6174 \]少し時間はかかったが、やはり \(6174\) にたどり着いた。
このように、4桁の数に対してこの操作を繰り返すと、多くの場合6174にたどり着く。
まるで、数が6174に吸い寄せられていくように見える。
操作のルールを整理する
ここで、操作のルールを整理しておく。
4桁の数に対して、次の操作をする。
カプレカ操作
\[ \text{数字を大きい順に並べた数} - \text{数字を小さい順に並べた数} \]たとえば、 \(3524\) なら、
\[ 5432-2345 \]である。
\(3087\) なら、0も含めて4桁として扱うので、
\[ 8730-0378 \]となる。
このように、4桁を保ったまま、数字を並べ替えて引き算する。
この操作をカプレカ操作と呼ぶことがある。
どんな4桁の数でもよいのか
では、どんな4桁の数でも6174にたどり着くのだろうか。
ここで注意が必要である。
すべての桁が同じ数字の場合は、6174には行かない。
たとえば、 \(1111\) を考える。
同じ数字だけの場合
\[ 1111-1111=0 \]この場合、すぐに0になってしまう。
\(2222\), \(3333\), \(9999\) なども同じである。
つまり、6174にたどり着くためには、少なくともすべての桁が同じではない4桁の数を考える必要がある。
また、途中で0を含む数が出てきても、4桁として扱う。
たとえば、 \(3087\) なら、 \(0378\) のように先頭に0を置いて考える。
なぜ6174で止まるのか
6174が特別なのは、同じ操作をすると自分自身に戻るからである。
もう一度確認する。
6174の固定性
\[ 7641-1467=6174 \]つまり、6174はこの操作に対する固定点である。
一度6174にたどり着くと、その後はずっと6174のままである。
ここが、6174が「定数」として見える理由である。
このように、ある操作を繰り返したときに、最後に同じところへ戻ってくる数は、とても面白い。
数そのものだけでなく、
操作を繰り返したときのふるまい
を見ているからである。
なぜ6174にたどり着くのか
ここで、少しだけ仕組みを考えてみる。
4桁の数字を大きい順に並べたものを
\[ abcd \]とする。
ただし、
\[ a\geq b\geq c\geq d \]である。
このとき、大きい順の数は、
\[ 1000a+100b+10c+d \]小さい順の数は、
\[ 1000d+100c+10b+a \]である。
これを引くと、
一般形で見る
\[ (1000a+100b+10c+d) - (1000d+100c+10b+a) \] \[ = 999(a-d)+90(b-c) \]つまり、カプレカ操作の結果は、
\[ 999(a-d)+90(b-c) \]という形で表せる。
この式から、結果はもとの数字そのものではなく、
最大の桁と最小の桁の差
2番目に大きい桁と2番目に小さい桁の差
によって決まることがわかる。
ここまで来ると、ただの不思議な遊びではなく、ある程度構造のある操作であることが見えてくる。
手作業で証明するのは少し大変
6174の面白さは、計算は簡単なのに、全体のふるまいをきちんと説明しようとすると意外と大変なところにある。
4桁の数はたくさんある。
その一つひとつに対して、何回で6174にたどり着くのかを調べることはできる。
しかし、それを手作業で全部確認するのはあまり現実的ではない。
こういうとき、コンピュータで調べると面白い。
0000から9999までの4桁の並びをすべて調べて、同じ数字だけのものを除き、カプレカ操作を繰り返す。
すると、多くの数が6174にたどり着くことを確認できる。
数学には、こういう
手で数例を試すと不思議に見え、コンピュータで全体を見ると構造が見えてくる
タイプの話がある。
6174は、その入り口としてかなり面白い題材である。
3桁にも似た現象がある
実は、4桁だけでなく、3桁にも似た現象がある。
3桁の場合、同じように数字を大きい順・小さい順に並べ替えて引くと、 \(495\) にたどり着くことがある。
たとえば、 \(352\) から始める。
3桁の例
\[ 532-235=297 \] \[ 972-279=693 \] \[ 963-369=594 \] \[ 954-459=495 \]そして、
\[ 954-459=495 \]なので、495も自分に戻る。
このように、桁数によって似たような定数が現れることがある。
4桁の場合の代表が6174である。
数遊びから数学へ
カプレカ定数の話は、最初は完全に数遊びに見える。
数字を並べ替えて引くだけである。
計算も難しくない。
しかし、何度か繰り返すと、なぜか6174にたどり着く。
このような現象を見ると、
なぜそうなるのか
と考えたくなる。
ここから数学が始まる。
ただ計算して終わるのではなく、操作のルールを見直す。
一般形で表す。
例外を探す。
コンピュータで調べる。
そうやって、数遊びは少しずつ数学になっていく。
まとめ
6174は、4桁の数に対してカプレカ操作を繰り返したときに現れる特別な数である。
カプレカ操作とは、
数字を大きい順に並べた数から、小さい順に並べた数を引く
という操作である。
たとえば、
\[ 3524 \to 3087 \to 8352 \to 6174 \]のように、何度か操作を繰り返すと6174にたどり着く。
そして、
\[ 7641-1467=6174 \]なので、6174は同じ操作で自分自身に戻る。
もちろん、すべての桁が同じ数字の場合は0になってしまう。
しかし、そうした例外を除くと、4桁の数は6174へ向かっていく。
この話の面白さは、計算そのものが簡単なところにある。
難しい公式はいらない。
ただ数字を並べ替えて引くだけである。
それでも、繰り返すと不思議な構造が見えてくる。
数学は、こういう素朴な数遊びの中にも隠れている。