3や9の倍数判定では、各桁の数字を足す。
これは、
3や9の倍数判定の理由
\[ 10 \equiv 1 \pmod{3} \] \[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]が成り立つからである。
では、11の倍数判定ではどうだろうか。
11の倍数判定では、各桁をただ足すのではなく、
交互に足し引きする
という方法が出てくる。
たとえば、
11の倍数判定の例
\[ 121 \] \[ 1-2+1=0 \]この結果が11の倍数、つまり0も含めて11で割り切れる数になれば、もとの数も11の倍数である。
実際、
\[ 121=11\times11 \]である。
しかし、なぜ交互に足し引きするのだろうか。
今回はこの理由を、合同式から整理してみたい。
11で割った余りの世界では、10は−1と同じ
まず大事なのは、11で割った余りの世界では、10が \(-1\) と同じように扱えることである。
なぜなら、
\[ 10-(-1)=11 \]であり、差が11で割り切れるからである。
したがって、合同式では、
11で割った余りの世界
\[ 10 \equiv -1 \pmod{11} \]と書ける。
ここが、11の倍数判定の出発点である。
3や9の倍数判定では、 \(10 \equiv 1\) だった。
だから各桁をそのまま足せばよかった。
一方、11では \(10 \equiv -1\) になる。
この \(-1\) が、交互に足し引きする理由である。
10の累乗は、1と−1を交互に繰り返す
10が \(-1\) と同じなら、100や1000はどうなるだろうか。
100は \(10^2\) である。
したがって、
100は1と同じ
\[ 100=10^2 \] \[ 10^2 \equiv (-1)^2 \equiv 1 \pmod{11} \]となる。
次に、1000は \(10^3\) である。
1000は−1と同じ
\[ 1000=10^3 \] \[ 10^3 \equiv (-1)^3 \equiv -1 \pmod{11} \]つまり、11で割った余りの世界では、
10の累乗の見え方
\[ 1 \equiv 1 \pmod{11} \] \[ 10 \equiv -1 \pmod{11} \] \[ 100 \equiv 1 \pmod{11} \] \[ 1000 \equiv -1 \pmod{11} \]となる。
位が上がるたびに、
\(1,-1,1,-1,\dots\)
と符号が交互に変わる。
これが、11の倍数判定で交互に足し引きする理由である。
121で確認してみる
では、実際に \(121\) で確認してみる。
まず、10進法の形に分解する。
121を位ごとに分ける
\[ 121=1\cdot100+2\cdot10+1 \]11で割った余りを考えると、
\[ 100 \equiv 1,\quad 10 \equiv -1 \pmod{11} \]だから、
11で割った余りを見る
\[ 121 \equiv 1\cdot1+2\cdot(-1)+1 \pmod{11} \] \[ =1-2+1=0 \]つまり、
\[ 121 \equiv 0 \pmod{11} \]である。
だから、\(121\) は11の倍数である。
もう少し大きい数で見てみる
もう少し大きい数でも見てみる。
たとえば、
\[ 9185 \]を考える。
この数を位ごとに分けると、
9185を位ごとに分ける
\[ 9185 = 9\cdot1000+1\cdot100+8\cdot10+5 \]11で割った余りの世界では、
\[ 1000\equiv -1,\quad 100\equiv 1,\quad 10\equiv -1 \]だから、
交互に足し引きする
\[ 9185 \equiv 9\cdot(-1)+1\cdot1+8\cdot(-1)+5 \pmod{11} \] \[ =-9+1-8+5=-11 \]\(-11\) は11で割り切れるので、
\[ -11 \equiv 0 \pmod{11} \]である。
したがって、\(9185\) は11の倍数である。
実際、
\[ 9185=11\times835 \]である。
右から始めても左から始めてもよい
11の倍数判定では、各桁を交互に足し引きする。
ここで、
左から足し引きするのか、右から足し引きするのか
が気になるかもしれない。
結論から言うと、どちらでもよい。
なぜなら、符号が全体として反対になるだけだからである。
たとえば、\(9185\) で考える。
左から交互に計算すると、
\[ 9-1+8-5=11 \]となる。
一方、右から交互に計算すると、
\[ 5-8+1-9=-11 \]となる。
どちらも11で割り切れる。
つまり、符号が逆になっても、11で割り切れるかどうかは変わらない。
左右どちらからでもよい
\[ 11 \equiv 0 \pmod{11} \] \[ -11 \equiv 0 \pmod{11} \]だから、実用上は覚えやすい方向から交互に足し引きすればよい。
交互に足すグループで見てもよい
11の倍数判定は、別の言い方をすることもできる。
各桁を交互に分けて、
一方のグループの和と、もう一方のグループの和の差を見る
という方法である。
たとえば、 \(9185\) なら、
交互のグループに分ける
\[ 9,\ 8 \quad \text{の和は} \quad 17 \] \[ 1,\ 5 \quad \text{の和は} \quad 6 \] \[ 17-6=11 \]差が11で割り切れるので、\(9185\) は11の倍数である。
これは、
\[ 9-1+8-5=11 \]と同じことをしている。
「交互に足し引きする」と覚えてもよいし、「交互の位をグループに分けて差を見る」と考えてもよい。
なぜ3や9とは違うのか
ここで、3や9の倍数判定と比べてみる。
3や9では、
\[ 10 \equiv 1 \]であった。
だから、
\[ 100 \equiv 1,\quad 1000 \equiv 1 \]となり、すべての位を同じ符号で足せばよかった。
一方、11では、
\[ 10 \equiv -1 \]である。
だから、
\[ 100 \equiv 1,\quad 1000 \equiv -1 \]となり、位によって符号が交互に変わる。
3・9と11の違い
\[ 10 \equiv 1 \pmod{3},\quad 10 \equiv 1 \pmod{9} \] \[ 10 \equiv -1 \pmod{11} \]つまり、3や9では各桁を足す。
11では、各桁を交互に足し引きする。
どちらも、10進法と合同式から自然に出てくる。
11の倍数判定は暗記ではなく、10の見え方で決まる
11の倍数判定は、最初は少し変わって見える。
各桁を交互に足し引きするというルールは、3や9の倍数判定よりも少し不自然に感じるかもしれない。
しかし、理由ははっきりしている。
11で割った余りの世界では、
\[ 10 \equiv -1 \]となる。
そのため、10の累乗は、
\[ 1,\ -1,\ 1,\ -1,\dots \]を交互に繰り返す。
だから、位ごとの数字も交互に足し引きすることになる。
つまり、11の倍数判定はただの裏技ではない。
10が11で割った余りの世界でどう見えるか
を見ているのである。
まとめ
11の倍数判定では、各桁の数字を交互に足し引きする。
その理由は、合同式で見るとかなりはっきりする。
11で割った余りの世界では、
11の倍数判定の核
\[ 10 \equiv -1 \pmod{11} \]が成り立つ。
そのため、
\[ 100=10^2\equiv1,\quad 1000=10^3\equiv-1 \pmod{11} \]となる。
位が上がるたびに、符号が \(1,-1,1,-1,\dots\) と交互に変わる。
だから、11の倍数判定では、各桁を交互に足し引きする。
もしその結果が11で割り切れるなら、もとの数も11の倍数である。
3や9の倍数判定では \(10\equiv1\) が効いていた。
11の倍数判定では \(10\equiv-1\) が効いている。
倍数判定は、ばらばらの暗記ではない。
10進法と合同式から見ると、ちゃんと同じ考え方でつながっている。