3の倍数や9の倍数を判定するとき、各桁の数字を足す方法がある。
たとえば、
3の倍数判定
\[ 123456 \] \[ 1+2+3+4+5+6=21 \]\(21\) は3の倍数なので、\(123456\) も3の倍数である。
また、
9の倍数判定
\[ 729 \] \[ 7+2+9=18 \]\(18\) は9の倍数なので、\(729\) も9の倍数である。
これは小学校や中学校でもよく出てくる判定法である。
しかし、あらためて考えると不思議である。
なぜ、各桁の数字を足すだけで、3や9の倍数かどうかがわかるのか。
今回はこの理由を、10進法と合同式から整理してみたい。
数は位ごとに分解できる
まず、10進法の仕組みから確認する。
たとえば、
\[ 8436 \]という数は、ただ数字が並んでいるだけではない。
実際には、
10進法の分解
\[ 8436 = 8\cdot1000+4\cdot100+3\cdot10+6 \]である。
千の位、百の位、十の位、一の位には、それぞれ
\[ 1000,\quad 100,\quad 10,\quad 1 \]という重みがついている。
だから、各桁の数字を足すという操作は、本来ならかなり乱暴に見える。
なぜなら、\(8\) は本当は \(8\cdot1000\) であり、\(4\) は本当は \(4\cdot100\) だからである。
それなのに、3や9の倍数判定では、
\[ 8+4+3+6 \]としてよい。
ここに、合同式の考え方が効いてくる。
9で割った余りを見ると、10は1と同じになる
まず、9の倍数判定から考える。
9で割った余りの世界では、10は1と同じようにふるまう。
9で割った余りの世界
\[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]なぜなら、\(10\) を9で割ると余りが1だからである。
すると、\(100\) や \(1000\) も同じように考えられる。
10の累乗も1と同じ
\[ 100=10^2 \equiv 1^2 \equiv 1 \pmod{9} \] \[ 1000=10^3 \equiv 1^3 \equiv 1 \pmod{9} \]つまり、9で割った余りだけを見るなら、
\[ 10,\quad 100,\quad 1000,\quad 10000,\dots \]は、すべて \(1\) と同じように扱える。
これが、各桁の数字を足してよい理由である。
8436で実際に見てみる
では、\(8436\) を9で割った余りで見てみる。
まず、位ごとに分解する。
8436を分解する
\[ 8436 = 8\cdot1000+4\cdot100+3\cdot10+6 \]9で割った余りを考えると、
\[ 1000\equiv1,\quad 100\equiv1,\quad 10\equiv1 \pmod{9} \]だから、
各桁の和になる
\[ 8436 \equiv 8\cdot1+4\cdot1+3\cdot1+6 \pmod{9} \] \[ \equiv 8+4+3+6 \pmod{9} \]つまり、
\[ 8436 \equiv 8+4+3+6 \pmod{9} \]である。
各桁の和は、
\[ 8+4+3+6=21 \]である。
さらに、
\[ 21 \equiv 2+1=3 \pmod{9} \]なので、
\[ 8436 \equiv 3 \pmod{9} \]とわかる。
つまり、\(8436\) は9で割ると余りが3になる。
だから、9の倍数ではない。
9の倍数判定の正体
ここまで見ると、9の倍数判定の正体がわかる。
ある数が9の倍数であるとは、9で割った余りが0であるということである。
合同式で書けば、
\[ N \equiv 0 \pmod{9} \]である。
そして、その数 \(N\) は、各桁の和と9で割った余りが同じになる。
9の倍数判定
\[ N \equiv \text{各桁の和} \pmod{9} \]だから、各桁の和が9の倍数なら、もとの数も9の倍数である。
逆に、各桁の和が9の倍数でなければ、もとの数も9の倍数ではない。
これが9の倍数判定である。
3の倍数判定も同じである
では、3の倍数判定はどうだろうか。
これも同じ考え方で説明できる。
なぜなら、
3で割った余りの世界
\[ 10 \equiv 1 \pmod{3} \]だからである。
10を3で割ると、余りは1である。
だから、3で割った余りを見るときにも、
\[ 10,\quad 100,\quad 1000,\dots \]はすべて1と同じように扱える。
つまり、
\[ N \equiv \text{各桁の和} \pmod{3} \]である。
そのため、各桁の和が3の倍数なら、もとの数も3の倍数になる。
123456で確認してみる
たとえば、
\[ 123456 \]を考える。
各桁の和は、
各桁の和を取る
\[ 1+2+3+4+5+6=21 \]21は3の倍数である。
したがって、\(123456\) も3の倍数である。
合同式で書けば、
\[ 123456 \equiv 21 \equiv 0 \pmod{3} \]ということである。
これは、各桁の和がたまたま役に立っているわけではない。
10進法において、
\[ 10 \equiv 1 \pmod{3} \]が成り立つからである。
なぜ2や5の倍数判定は一の位を見るのか
ここで、少し比較してみる。
2の倍数や5の倍数を判定するときは、各桁の和ではなく、一の位を見る。
たとえば、
一の位が偶数なら2の倍数
一の位が0か5なら5の倍数
である。
これは、10が2でも5でも割り切れるからである。
2や5で割るとき
\[ 10 \equiv 0 \pmod{2} \] \[ 10 \equiv 0 \pmod{5} \]だから、十の位以上の部分は、2や5で割った余りを見るときには消えてしまう。
その結果、一の位だけを見ればよくなる。
一方、3や9では、
\[ 10 \equiv 1 \]となる。
だから、各桁の和を見ることになる。
このように考えると、倍数判定はバラバラな暗記ではなくなる。
どれも、
10が、その数で割った余りの世界でどう見えるか
によって決まっている。
なぜ9の倍数は数字根とも関係するのか
前の記事で、数字根について扱った。
数字根とは、各桁の数字を足し続けて、最終的に1桁にした数である。
たとえば、
\[ 8436 \to 21 \to 3 \]なら、数字根は3である。
これは9で割った余りと深く関係している。
なぜなら、各桁を足しても9で割った余りは変わらないからである。
つまり、
\[ 8436 \equiv 21 \equiv 3 \pmod{9} \]である。
だから、数字根を見ることは、9で割った余りを見ることにかなり近い。
ただし、9の倍数の場合だけ少し注意が必要である。
9で割った余りは0だが、数字根では9として表される。
たとえば、
\[ 18 \to 1+8=9 \]なので、\(18\) の数字根は9である。
しかし、9で割った余りは0である。
この意味で、数字根は
9で割った余りを、1〜9の形で表したもの
と見ることができる。
倍数判定はただの裏技ではない
3や9の倍数判定は、暗記だけでも使える。
しかし、理由を知っておくと見え方が変わる。
各桁の和を見るのは、たまたま便利な裏技ではない。
10進法と合同式から自然に出てくる。
3や9で割った余りの世界では、
\[ 10 \equiv 1 \]となる。
だから、\(10\), \(100\), \(1000\) という位の重みを、すべて \(1\) として扱うことができる。
その結果、各桁の数字を足しても、3や9で割った余りが変わらない。
これが、各桁の和で倍数判定ができる理由である。
まとめ
3や9の倍数判定で各桁の和を見る理由は、10進法と合同式にある。
9で割った余りの世界では、
\[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]が成り立つ。
だから、
\[ 100 \equiv 1,\quad 1000 \equiv 1 \pmod{9} \]となる。
そのため、数を位ごとに分解しても、各位の重みはすべて1として扱える。
つまり、
\[ N \equiv \text{各桁の和} \pmod{9} \]である。
同じように、
\[ 10 \equiv 1 \pmod{3} \]なので、3の倍数判定でも各桁の和が使える。
倍数判定は、ただの暗記ではない。
そこには、
余りで数を見る
という合同式の考え方が隠れている。