数学には、数そのものを見るのではなく、
割った余りで数を見る
という考え方がある。
これが、合同式の基本である。
合同式というと、急に難しそうに見えるかもしれない。
記号も少し独特で、
合同式の例
\[ 17 \equiv 5 \pmod{12} \]のように書く。
しかし、言っていることはそこまで難しくない。
これは、
17と5は、12で割った余りが同じである
という意味である。
今回は、合同式を「余りで数を見る考え方」として整理していきたい。
合同式は「同じ余り」を表す
まず、次の式を見てみる。
12で割った余りを見る
\[ 17 \div 12 = 1 \text{ 余り } 5 \] \[ 5 \div 12 = 0 \text{ 余り } 5 \]17と5は、同じ数ではない。
しかし、12で割った余りを見ると、どちらも余りは5である。
このとき、合同式では
合同式で書く
\[ 17 \equiv 5 \pmod{12} \]と書く。
読み方は、
17は5と12を法として合同である
のように読む。
ただ、最初は難しい読み方を覚えるより、
12で割った余りが同じ
と考えれば十分である。
mod は「何で割った余りを見るか」を表す
合同式に出てくる \(\pmod{12}\) は、
12で割った余りで考える
という意味である。
たとえば、
mod の意味
\[ a \equiv b \pmod{m} \]は、
\(a\) と \(b\) は、\(m\) で割った余りが同じ
という意味である。
この \(m\) のことを「法」と呼ぶ。
つまり、 \(\pmod{12}\) なら、12で割った余りを見る。
\(\pmod{7}\) なら、7で割った余りを見る。
\(\pmod{9}\) なら、9で割った余りを見る。
合同式は、数をそのまま比べるのではなく、
ある数で割った余りだけに注目する
ための記号なのである。
時計は mod 12 の世界である
合同式の感覚をつかむには、時計を考えるとわかりやすい。
時計では、12の次は13時ではなく1時になる。
たとえば、今が5時だとする。
そこから12時間後は何時だろうか。
普通の数として考えれば、
\[ 5+12=17 \]である。
しかし、時計では17時ではなく、また5時に戻る。
時計の計算
\[ 17 \equiv 5 \pmod{12} \]これは、12で割った余りが同じだからである。
つまり、時計は
12で割った余りの世界
として見ることができる。
だから、合同式は決して特別なものではない。
私たちは、時計を見るとき、すでに合同式に近い考え方をしている。
曜日は mod 7 の世界である
曜日も同じである。
曜日は7日で一周する。
今日から7日後は、また同じ曜日である。
今日から14日後も同じ曜日である。
今日から21日後も同じ曜日である。
つまり、曜日を考えるときには、
7で割った余り
が重要になる。
たとえば、今日から100日後の曜日を考える。
100日をそのまま数えるのは面倒である。
しかし、
100日後を7で見る
\[ 100 = 7 \times 14 + 2 \] \[ 100 \equiv 2 \pmod{7} \]である。
つまり、100日後は、曜日だけを考えれば2日後と同じである。
このように、周期があるものを考えるとき、合同式はとても自然に出てくる。
差が割り切れる、と考えてもよい
合同式には、もう一つ大事な見方がある。
\(a\) と \(b\) が \(m\) で割った余りが同じであることは、
\(a-b\) が \(m\) で割り切れる
ことと同じである。
たとえば、
\[ 17 \equiv 5 \pmod{12} \]である。
これは、17と5の差が
\[ 17-5=12 \]であり、12が12で割り切れるからである。
合同式の別の見方
\[ a \equiv b \pmod{m} \] \[ \Longleftrightarrow \] \[ a-b \text{ が } m \text{ で割り切れる} \]この見方は、計算するときにとても役に立つ。
余りを直接調べてもよいし、差が割り切れるかを調べてもよい。
どちらも同じことを見ている。
合同式では、余りだけを使って計算できる
合同式の便利なところは、余りだけを使って計算できることである。
たとえば、
\[ 38+47 \]を9で割った余りを考えたいとする。
もちろん、普通に計算してもよい。
\[ 38+47=85 \]85を9で割ると、余りは4である。
しかし、合同式を使えば、最初から余りだけで考えられる。
余りだけで計算する
\[ 38 \equiv 2 \pmod{9} \] \[ 47 \equiv 2 \pmod{9} \] \[ 38+47 \equiv 2+2 \equiv 4 \pmod{9} \]つまり、38や47という数そのものを扱わなくても、9で割った余りだけを見ればよい。
これは大きな数を扱うときにとても便利である。
10≡1 mod 9 が倍数判定につながる
合同式を知ると、3や9の倍数判定も見えやすくなる。
10は9で割ると1余る。
だから、
9で割った余りの世界
\[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]である。
すると、
\[ 100=10^2 \equiv 1^2 \equiv 1 \pmod{9} \]であり、
\[ 1000=10^3 \equiv 1^3 \equiv 1 \pmod{9} \]でもある。
つまり、9で割った余りを考えるとき、10も100も1000も、すべて1と同じように扱える。
だから、たとえば
\[ 8436 \]は、
各桁の和につながる
\[ 8436 = 8\cdot1000+4\cdot100+3\cdot10+6 \] \[ \equiv 8+4+3+6 \pmod{9} \]となる。
これが、各桁の和と9の倍数判定がつながる理由である。
この話は、次の記事でさらに丁寧に扱いたい。
11の倍数判定では10≡−1が効いてくる
合同式を使うと、11の倍数判定も見やすくなる。
10は11で割ると、余り10である。
しかし、余り10は、\(-1\) と同じように見ることもできる。
なぜなら、
\[ 10-(-1)=11 \]であり、その差が11で割り切れるからである。
11で割った余りの世界
\[ 10 \equiv -1 \pmod{11} \]すると、
\[ 100=10^2 \equiv (-1)^2 \equiv 1 \pmod{11} \]であり、
\[ 1000=10^3 \equiv (-1)^3 \equiv -1 \pmod{11} \]となる。
つまり、位が上がるたびに、符号が
\(1,-1,1,-1,\dots\)
と交互に変わる。
これが、11の倍数判定で各桁を交互に足し引きする理由である。
これも別の記事で詳しく扱いたい。
合同式は数を雑に見る道具ではない
合同式では、数そのものではなく、余りだけを見る。
そう聞くと、数を雑に扱っているように感じるかもしれない。
しかし、そうではない。
合同式は、必要な情報に絞って数を見るための道具である。
曜日を考えるとき、100日後をそのまま100日分数える必要はない。
7で割った余りだけを見ればよい。
時計を考えるとき、17時をそのまま17として扱う必要はない。
12で割った余りを見れば、5時と同じだとわかる。
つまり、合同式は、
何が重要かを決めて、その情報だけで数を見る
考え方である。
ここがわかると、合同式は急に便利な道具に見えてくる。
まとめ
合同式は、割った余りが同じ数を同じ仲間として見る考え方である。
たとえば、
\[ 17 \equiv 5 \pmod{12} \]は、17と5が12で割った余りが同じであることを表している。
また、
\[ a \equiv b \pmod{m} \]は、\(a\) と \(b\) が \(m\) で割った余りが同じであることを表す。
あるいは、
\[ a-b \]が \(m\) で割り切れる、と考えてもよい。
時計は \(\pmod{12}\) の世界であり、曜日は \(\pmod{7}\) の世界である。
そして、倍数判定では
\[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]や
\[ 10 \equiv -1 \pmod{11} \]が重要になる。
合同式は、難しい記号に見えるかもしれない。
しかし、その中身は
余りで数を見る
という、とても自然な考え方である。
数そのものではなく、余りに注目する。
そうすることで、時計、曜日、倍数判定、循環小数など、さまざまな現象が同じ見方でつながってくる。