数の遊びとして、各桁の数字を足し続けるというものがある。
たとえば、
各桁の数字を足す
\[ 8436 \] \[ 8+4+3+6=21 \] \[ 2+1=3 \]というように、数字を足して、またその結果の数字を足して、1桁になるまで続ける。
一見すると、ただの数遊びである。
しかし、この操作にはちゃんと名前がある。
最後に出てくる1桁の数は、
数字根
と呼ばれる。
英語では digital root という。
また、1桁になるまでに何回この操作を繰り返すかを見るときは、
加法的持続性
と呼ばれる。
英語では additive persistence という。
今回は、この「数字を足し続ける」という素朴な遊びから、9で割った余りとの関係まで見ていきたい。
数字根とは何か
数字根とは、各桁の数字を足し続けて、最終的に得られる1桁の数である。
先ほどの例をもう一度見てみる。
8436の数字根
\[ 8436 \to 8+4+3+6=21 \] \[ 21 \to 2+1=3 \]最後に出てくる数は \(3\) である。
したがって、\(8436\) の数字根は \(3\) である。
別の例も見てみる。
別の例
\[ 9875 \to 9+8+7+5=29 \] \[ 29 \to 2+9=11 \] \[ 11 \to 1+1=2 \]この場合、最後に出てくる数は \(2\) である。
したがって、\(9875\) の数字根は \(2\) である。
こういう計算は、小学生でもできる。
しかし、その裏にはなかなか面白い数の性質がある。
加法的持続性とは何か
数字根が「最後に出てくる1桁の数」だとすれば、加法的持続性は、
1桁になるまでに、各桁の和を何回取ったか
を表す。
たとえば、\(8436\) の場合は、
8436の加法的持続性
\[ 8436 \to 21 \to 3 \]である。
各桁の和を取ったのは、
- \(8436 \to 21\)
- \(21 \to 3\)
の2回である。
したがって、\(8436\) の加法的持続性は \(2\) である。
一方、\(9875\) の場合は、
9875の加法的持続性
\[ 9875 \to 29 \to 11 \to 2 \]なので、各桁の和を3回取っている。
したがって、\(9875\) の加法的持続性は \(3\) である。
数字根は「最後の結果」。
加法的持続性は「そこまでにかかった回数」。
そう考えるとわかりやすい。
なぜ各桁を足してよいのか
ここから少し数学っぽい話に入る。
なぜ、各桁の数字を足すという操作に意味があるのだろうか。
たとえば、
\[ 8436 \]という数は、実際には
\[ 8\cdot 1000+4\cdot 100+3\cdot 10+6 \]である。
ここで、9で割った余りを考える。
10は9で割ると余り1である。
10は9で割ると1余る
\[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]すると、
\[ 100=10^2 \equiv 1^2 \equiv 1 \pmod{9} \]であり、
\[ 1000=10^3 \equiv 1^3 \equiv 1 \pmod{9} \]でもある。
つまり、9で割った余りを見る世界では、
\(10\) も \(100\) も \(1000\) も、すべて \(1\) と同じようにふるまう
のである。
8436を9で割った余りで見る
では、\(8436\) を見てみる。
8436を位ごとに見る
\[ 8436 = 8\cdot 1000+4\cdot 100+3\cdot 10+6 \]9で割った余りを考えると、
\[ 1000 \equiv 1,\quad 100 \equiv 1,\quad 10 \equiv 1 \pmod{9} \]だから、
9で割った余りは各桁の和と同じ
\[ 8436 \equiv 8+4+3+6 \pmod{9} \] \[ 8+4+3+6=21 \]となる。
さらに、
\[ 21 \equiv 2+1=3 \pmod{9} \]である。
つまり、
\[ 8436 \equiv 21 \equiv 3 \pmod{9} \]である。
これが、数字を足し続ける操作と9で割った余りがつながる理由である。
数字根は9で割った余りに近い
数字根は、9で割った余りと深く関係している。
ただし、少しだけ注意がある。
たとえば、数字根が \(3\) の数は、9で割った余りも \(3\) である。
しかし、数字根が \(9\) の数は、9で割った余りは \(0\) である。
たとえば、
\[ 18 \to 1+8=9 \]なので、\(18\) の数字根は \(9\) である。
しかし、\(18\) は9で割り切れるので、9で割った余りは \(0\) である。
つまり、数字根はだいたい「9で割った余り」と同じだが、余り0の場合だけ \(9\) として表す、と考えるとよい。
数字根と9で割った余り
\[ \text{数字根は、9で割った余りを1〜9の形で表したもの} \]だから、数字根が \(9\) になる数は9の倍数である。
これは、9の倍数判定ともつながっている。
3や9の倍数判定にもつながる
各桁の和が9で割った余りと関係するなら、倍数判定にも使える。
たとえば、
\[ 729 \]を考える。
729の各桁の和
\[ 7+2+9=18 \] \[ 1+8=9 \]数字根は \(9\) である。
したがって、\(729\) は9の倍数である。
同じように、3の倍数判定でも各桁の和が使える。
なぜなら、
\[ 10 \equiv 1 \pmod{3} \]でもあるからである。
つまり、3で割った余りを考えるときにも、各桁の数字を足してよい。
この話は、別の記事でもう少し丁寧に扱いたい。
ただの遊びから合同式へ
数字を足し続ける操作は、最初はただの遊びに見える。
しかし、その裏には
10進法
9で割った余り
合同式
が隠れている。
特に、
\[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]という事実がかなり重要である。
10進法では、位が上がるたびに10倍される。
しかし、9で割った余りの世界では、その10倍が1倍と同じように扱える。
だから、位の重みをいったん外して、各桁の数字だけを足しても、9で割った余りが変わらない。
ここが見えると、数字を足し続ける遊びが、数論の入口に見えてくる。
まとめ
各桁の数字を足し続けて1桁にする操作では、最後に出てくる数を数字根という。
また、1桁になるまでに何回その操作を繰り返したかは、加法的持続性と呼ばれる。
たとえば、
\[ 8436 \to 21 \to 3 \]なら、数字根は \(3\)、加法的持続性は \(2\) である。
この操作が面白いのは、9で割った余りと深く関係しているからである。
10進法では、
\[ 10 \equiv 1 \pmod{9} \]である。
そのため、各桁の数字を足しても、9で割った余りは変わらない。
つまり、数字を足し続けるという素朴な操作は、実は9で割った余りを見ている操作でもある。
数学の面白さは、こういうところにあると思う。
ただの数遊びに見えるものが、少し掘ると、合同式や倍数判定につながっている。
数字を足し続けるだけでも、数の世界は意外と深いのである。