先日、高校生から因数分解の質問を受けた。
問題は、次の式である。
問題
\[ x^3+8y^3+1-6xy \]生徒からは、こう聞かれた。
これは公式を覚えるしかないのでしょうか。
この質問は、かなり大事だと思う。
数学を勉強していると、どうしても「これは公式を覚えていないと無理なのではないか」と感じる場面がある。
たしかに、公式を知っていれば一瞬で進める問題はある。
ただし、公式を知らなければ完全に手も足も出ないのかというと、必ずしもそうではない。
今回の問題は、まさにその中間にある問題である。
公式を知っていれば、たしかに速い
まず、この式は公式を知っていればかなり速く解ける。
与えられた式は、
\[ x^3+8y^3+1-6xy \]である。
ここで、
立方の形を見る
\[ 8y^3=(2y)^3 \] \[ 1=1^3 \]と見ることができる。
すると、式の中には、
\[ x^3,\quad (2y)^3,\quad 1^3 \]という3つの立方が見えてくる。
さらに、
\[ -6xy=-3\cdot x\cdot 2y\cdot 1 \]と見ることもできる。
つまり、この式は
公式に乗る形
\[ x^3+(2y)^3+1^3-3\cdot x\cdot 2y\cdot 1 \]という形をしている。
ここで有名な公式を知っていれば、一気に因数分解できる。
3つの立方の公式
\[ a^3+b^3+c^3-3abc = (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) \]この公式で、
\[ a=x,\quad b=2y,\quad c=1 \]とすれば、答えはすぐに出る。
公式による因数分解
\[ x^3+8y^3+1-6xy = (x+2y+1)(x^2-2xy+4y^2-x-2y+1) \]たしかに、公式を知っていれば速い。
しかし、問題はここからである。
では、この公式を覚えていなかったら解けないのか。
今回はここを考えたい。
公式を知らなくても、まず因数を探すことはできる
公式を知らない場合、いきなり答えの形を出すのは難しい。
ただし、「何で割れそうか」を考えることはできる。
もう一度、式を見てみる。
\[ x^3+8y^3+1-6xy \]この式の中には、
\[ x,\quad 2y,\quad 1 \]という3つのかたまりが隠れている。
なぜなら、
\[ x^3,\quad 8y^3=(2y)^3,\quad 1=1^3 \]だからである。
そして、 \(-6xy\) も、
\[ -6xy=-3\cdot x\cdot 2y\cdot 1 \]と見ることができる。
こう見ると、この式はかなり強く
\[ x,\quad 2y,\quad 1 \]という3つのかたまりでできていることがわかる。
そこで、
疑うべき因数
\[ x+2y+1 \]が因数ではないかと疑ってみる。
ここが大事である。
最初から公式が出てこなくても、「この式は何で割れそうか」を考えることはできる。
本当に因数かどうかは代入で確かめる
では、 \(x+2y+1\) が本当に因数かどうかを確かめる。
因数であるかを調べるには、
\[ x+2y+1=0 \]として、式全体が0になるかを見ればよい。
つまり、
\[ x=-2y-1 \]を代入する。
元の式
\[ x^3+8y^3+1-6xy \]に、 \(x=-2y-1\) を代入すると、
代入して確認する
\[ (-2y-1)^3+8y^3+1-6(-2y-1)y \]となる。
ここで、
\[ (-2y-1)^3=-8y^3-12y^2-6y-1 \]また、
\[ -6(-2y-1)y=12y^2+6y \]である。
したがって、全体は次のように整理できる。
すべて消える
\[ -8y^3-12y^2-6y-1 +8y^3+1 +12y^2+6y = 0 \]すべてきれいに消えるので、
\[ x+2y+1 \]は確かに因数である。
あとは整式の割り算をする
ここまで来れば、あとは整式の割り算である。
今回の問題が「整式の割り算」の単元で出てきたなら、むしろこの考え方の方が自然かもしれない。
つまり、
\[ x^3+8y^3+1-6xy \]を
\[ x+2y+1 \]で割ればよい。
ただし、この式には \(x\) と \(y\) の2つの文字が出てくる。
こういうときは、どちらの文字について割るのかを決める。
今回は \(x\) について割ることにする。
そのため、\(y\) はいったん係数の一部のように扱えばよい。
元の式を \(x\) について整理すると、
xについて整理する
\[ x^3+0x^2-6yx+(8y^3+1) \]である。
実際の割り算は、筆算で確認すると見やすい。
割り算の結果、商は、
割り算の商
\[ x^2-(2y+1)x+4y^2-2y+1 \]となる。
これを展開して整理すると、
\[ x^2-2xy+4y^2-x-2y+1 \]である。
答え
以上より、
答え
\[ x^3+8y^3+1-6xy = (x+2y+1)(x^2-2xy+4y^2-x-2y+1) \]これが因数分解の答えである。
公式を覚えるしかないのか
では、最初の質問に戻る。
これは公式を覚えるしかないのでしょうか。
僕の答えは、こうである。
覚えていた方が速い。
でも、覚えていないと絶対に解けないわけではない。
この問題は、公式を知っていればかなり速く解ける。
その意味では、公式を覚える価値はある。
試験中に毎回その場で因数を探して、代入して、割り算をしていたら、時間がかかる。
だから、よく出る形を公式として覚えることには意味がある。
ただし、公式を覚えることと、考えることをやめることは違う。
公式を忘れたとしても、今回のように
- 式の中のかたまりを見る
- 何で割れそうかを考える
- 代入して0になるか確かめる
- 整式の割り算で割る
という流れで進めることはできる。
つまり、公式は「知らないと終わり」というものではない。
むしろ、何度も考えた結果を短くまとめたものが公式である。
2文字の式でも、見方を決めればよい
今回の問題で、もう一つ大事なのはここである。
2つの文字が出てくると、整式の割り算が急に難しく見える。
しかし、基本は変わらない。
どの文字についての整式として見るかを決める
これだけである。
今回なら、\(x\) について割り算すると決めた。
だから、\(y\) は係数の一部として扱った。
もちろん、慣れていないうちは少し見づらい。
ただ、「\(x\) について見る」と決めてしまえば、やっていることは普通の整式の割り算と同じである。
ここがわかると、2文字の式でも少し落ち着いて見られるようになる。
まとめ
今回の因数分解は、公式を知っていれば一気に解ける。
その意味では、公式を覚える価値はある。
しかし、公式を覚えていないから何もできない、というわけではない。
式の中に、
\[ x,\quad 2y,\quad 1 \]というかたまりを見つける。
そこから、
\[ x+2y+1 \]が因数ではないかと疑う。
代入して0になることを確認する。
そして、整式の割り算で割る。
この流れでも、因数分解までたどり着くことができる。
数学では、公式を覚えることも大事である。
ただ、公式を覚えるだけで終わると、少しもったいない。
公式は、考えなくて済むための呪文ではない。
考えた結果を、短く使えるようにまとめたものである。
だからこそ、公式を覚える前に、まず式を見て「何で割れそうか」を考えてみる。
その姿勢があると、因数分解はただの暗記ではなくなる。